TVアニメ「デュラララ!!」全話観た感想:異質さとリアリティを感じた部分を中心に

2010年07月9日(by キョウ) コメント0
久々にアニメの感想をまとめてみました。
今年1月から放送がはじまり先日6月末に最終話を迎えたTVアニメ「デュラララ!!」に関してです。
普通の作品と比べると異質で面白く気になる面があり、書いておきたい事が断片的にあった作品だったので。

作画・演出・背景も最終話までよい出来でしたが、普通の作品とは違うと感じた部分を中心に感想をまとめました。
以下、ネタばれありますので。

●第1話の印象について
原作小説未読でした。
初回を観た時から、定番コテコテ的な既視感のあるTVアニメの雰囲気がほぼ感じられなく、最近では異質な感じがした作品でした。
暴力的な描写や会話等の部分にリアリティがありました。
暴力にもリアリティを感じさせる作品は、アニメだとかなり少ない気がします。

●前半の話の面白さについて
前半は、毎回主人公が変わるかのような印象の群像劇でした。
普通の物語だと主人公視点からの話が多いので、主人公の価値観から見る世界の話になることが多いです。しかし、ほぼ毎回、主役になる人物が違いその視点からの話だったので、毎話、価値観も少しずつ違うものになっていました(原作者は一人なので、その価値観は、やはりその人の想像できる幅のものになるのでしょうが)。
主人公視点のみの話だと、マンネリになったり退屈になったりする場合もあるのですが、毎回、新鮮味があり、そういった事がほぼなかったです(なかなか落ち着いた立場で観られないという面もありましたが)。
そして、真(?)主人公(今回のアニメだと帝人)に物語の主導権を渡さないのです。視聴者も真主人公と同じように謎や危険がある慣れない街や人物たちに翻弄され不安定な気持ちでその世界を追っていくような感じにさせられていたのかもしれません。

街の青少年たちの身も蓋もない現実主義で非情な世界を中心に見せ、その中での価値観や愛を見せていく作品になるのかな?とも推測してました。
今後、どうなっていくのかわからず、物語の価値観の定まり無さ、少ししか明らかにされない登場人物の謎が、話に緊張感をもたせワクワクもさせられました。
謎や物語の価値観を明らかにせず、登場人物の思っていることも説明し過ぎず(この点は後半も同様かも)、何時まで経っても街や人や物語がはっきりした姿を現さない感じでした。

●後半の話について
話数も後半(斬り裂き魔の事件以降)になると、流石に真主人公・帝人の中心視点が多い話になっていきました(時間軸のばらつきも無くなり)。
また数々の謎のネタばれもされ、それが当たり前になっていき、物語の世界の枠も落ち着いて来て、残念ながら未知な感じのワクワク感・緊張感は前半に比べると薄れていきました。
メイン3人(帝人、正臣、杏里)の心が離れている期間も長くなり、黄巾賊とダラーズの抗争の割合が多くなってきて、個人的な盛り上がりも少し落ちてしまいました。

●最終話について
最終話では、勧善懲悪&愛と対話で克服される的な少しロマンチックな良識ある価値観で爽快にまとまって終になりました。
今までの話を考えると、急にその傾向が強くなった感じで、もう少し抑えた方が好みでした。
今まで、暴力にしろ異能力にしろ情報にしろ技術力にしろ人間力にしろ力をもつ者が、街で立場を築くドライで現実主義的な面を多く描いていたので。
そのように詰め込まないとまとまらなかったのでしょうが。
シズちゃん強過ぎで、そこは痛快でしたけどw

傍観者的な立場だけど力をもつ年長者たち(静雄やサイモンetc)が、最後は良識的な対場で力(暴力)を発揮して、物語をまとめたのは、この物語の現実主義的な面とロマンチックな面が現れていたのかなと思いました。
更に今回の黒幕orラスボスとも言えるような臨也に最後に正義の鉄槌&説教をしたのが、外国人のサイモンというのも興味深い感じがしました。
結局、外部の人間(外国)にメスを入れてもらわないと内部(国内)ではどうにもならない、現実でもよくある比喩にも思えたからです。
そういう点も現実主義的に思えました。


●登場人物たちの性格・価値観・コミュニケーションについて
登場人物たちが各人の価値観を押し付けないゆるやかな自由さが、心地よかったです。
世間一般的な視点だと偏った価値観をもっている人たちが大勢出てくるので、それぞれの価値観を否定したり・嫌ったり、対決したりしてもおかしくなさそうなのですが、そうした面倒な事はそれぞれの価値観の偏りに比べると多く起きないのです。
アイツはアイツ、オレはオレといった感じで、必要以上には干渉せず、さっぱりしています。必要時には言いますが。

よくあるTVドラマのような世間的な(良識の)価値観から否定する一般人がほぼいません。
典型的な常識的な一般人が登場しないのです。一般人が非日常の世界に巻き込まれていく物語の形を取っていますが、一般人の位置にいる感じの主人公の帝人も、非日常的な価値観を強い拒絶無しに当たり前のように受け入れたり流したりしていきます。
その辺りにも自由さを感じました。自由だけど、勝手な人も多いですが。

杏里の依存的とされる生き方だけは、他人から少なからず否定されていた印象でした(客観的には依存出来ず一人で抱え込んで生きている感じですが)。
杏里以外の人の価値観があまり否定されないのは、その人が意識的には「依存している」と思って生きていないからかな? 自意識的に依存していると思っている人が否定されるという。そこは原作者の価値観や自意識的な悩みが出ているのかな?と憶測も。

共感や理解もあまり求めていない感じで、わかってもらえない事や理解されないネガティブな気持ちを登場人物たちが感じる描写が少ない気がします。
若いのだし、もっと理解してほしいとならないのかな?と思うのですが、それぞれ独立し達観しているような感じの人が多いのです。
世間的な良識の価値観の圧力があまり描かれていないことからも、周りや世間から理解される・合わせる事に関して、重要に思っていない人が多そうです。
馴れ合いや同情は避けるべきものという雰囲気もありそうです。
一体感を得る事にも慎重な感じです。
また、全て自己責任とされている価値観が基本としてあるような感じです。
理解出来ない人とは分かり合えないのだから、はじめから無駄にコミュニケーションはしないという感じもあります。

以上の特徴は、現在の日本の都市に住む人間(若者?)の特徴の1部分と言われそうな面もありますが、自分もその傾向が部分的にはあるため理解でき、一面でリアリティを感じます。
しかし、様々な人と出会う現実はそうはいかない事が結構あるので、他人との面倒な関係で悩むという視点では、リアリティさがない面もあるかなと思えました。感情的に悩む人が少ないのかな? 細かい事は流す、懐が大きい人が多いのかな?
でも、きっちりした日常的なリアリティある心情描写・人間描写等を指向する作品ではなさそうだしとも思いました。
そうしたら、原作の面白さや個性が減る可能性もありそうですし。

広がっていそうなのに閉ざしている、閉ざしているのに広がっている、そんな両面がある人間世界に感じました。
うまくまとめられませんでしたが、登場人物の性格も価値観もコミュニケーションも普通のアニメ作品と違って、リアリティもあるのに個性があり少し異質な感じでよかったです。

●原作とアニメを比べて
アニメと原作がどのように違っているのか興味があり、先日、原作1巻を購入し読んでみました。
1巻だけ読んだ比較ですが、アニメと比べると各キャラのモノローグが多くあり、思っていることがわかりやすくなっていた感じでした。
また暴力等に関しての描写は、アニメ程にはリアリティを感じるものではなかったです。
少し意外でしたが、全体的にアニメで感じた程の異質さやリアリティをあまり感じなかったのです。
自分の想像力の問題も大きいかもしれませんが。

●アニメで感じた異質さについて
自分がアニメで感じた異質さの理由は何だったのでしょう?
(ちなみに検索してみると、異質に感じていた人は少ないながらもいたようです。)
その理由の一つは、小説作品としては珍しくなく感じるものでも、TVアニメという形(メディア)では珍しかった話や描写や人物だったからかもしれません。
例えば、
・TVアニメではよくある、主人公を中心とした世界にならない(主に前半)。
・前半が毎回主役が変わるような群像劇(これに関しては、アニメのシリーズ構成の仕事のようですが)。
・世間一般的には偏った価値観をもつ人たちが不自然な程(?)自然に存在し、現実に在る街を舞台にした物語だった。
・TVアニメで描写があったとしても、ほとんどテンプレ的にしか描写されないであろう、現実に在る街にたむろしている青少年たちのリアリティある暴力等が描かれていた。

そして、もう一つの理由は、アニメ化によって、小説では表現できないディテールが詰め込まれた世界(絵、表情、動き、声、間、音、BGM、背景等)が現われ、それらの表現にアニメ作品としては少し過剰なリアリティさを感じ、それが異質さも感じさせたように思えます。
その中でも特に街の青少年たちの暴力シーンや、街の背景美術には、生っぽいリアリティを強く感じさせられたように思います。映像そのものはアニメだけど、そういった部分は実写っぽいリアリティを背後に感じました。
声優さんの実際の声のセリフと、現実よりもざらついた・猥雑な感じを受けるデフォルメされた背景美術の効果が大きかったように思えました。

●キャラクターデザインやモブキャラについて
岸田隆宏さんのキャラクターデザインもそれぞれの特徴が出て魅力的でよかったです。
岸田隆宏さんはアニメーターとしてもキャラクターデザイナーとしても好きです。

モブキャラの色は灰色になることがほとんどでしたが、それぞれ色があった方がよかったように思います。街の人間の雑多さを表現するには、その方がよかったと思うからです。
あと、さわやかさはあまりない街の背景の絵に灰色の人物だとどうしても「灰色の街」「コンクリートジャングルの無機質な人間」というイメージを感じてしまうからです。
灰色にした理由は、制作作業の省力化という理由があったとしても(自分の勝手な憶測です)他に、カラーギャングの色の問題、ダラーズの無色透明のイメージの問題、灰色の無機質な人間のイメージにしたかった、背景美術の街のリアリティ度を上げたかったetc、何かしらあったと思いますが。

●最後に
自分が予想していた以上にアニメのディスク(DVD)は売れているようです。よかったのですが、何故でしょうかね。女性人気も高かったらしいから? 考察する材料が少ないし、よくはわからないので止めておきますが。
でも2期があっても、明らかになった謎も結構あり、もう1期前半のように緊張感あるワクワクした感じでは観られない気がします。
2期も群像劇的に上手い具合にシリーズ構成してもらえたら、違うかもしれませんが。
そのくらい前半は普通の作品と比べ、異質な感じもあり面白かったのです。
個人的に、こういうリアリティも部分的にある少し異質で面白い作品が、もう少し増えてくれるとうれしいです。

以上、個人的に気になっていた事をまとめてみました。
記憶力悪いので印象だけで書いてしまった感想部分があるかもしれません。
相変わらず、まとめるのに時間が掛かる。。結局、まとめきれなかった部分もあるし。。
後から気になって、追記等するかもしれませんが。

[お知らせ] 7/11(日)深夜からTOKYO MXだけですが、再放送がはじまるそうです(2010年)。