A-1 Pictures社長・植田益朗さん セミナー「アニメコンテンツとのつきあい方 ―アニメ制作は変わるのか―」 (2011.9.10):レポート

2011年9月16日(by キョウ) コメント0
9月10日(土)に代々木アニメーション学院主催 業界セミナーvol.2「アニメコンテンツとのつきあい方 ―アニメ制作は変わるのか―」に行ってきました。
講師は、A-1 Pictures社長・植田益朗さん。会場は、代々木アニメーション学院 東京本部校。
取材も受け付けていたので、前回同様に後で詳細な記事が上がるかもしれませんが、レポートします。
なお当日はUstreamでの生放送もありました。

【注意】
  • 自分が取れたメモをもとにまとめ+記憶で補足している部分もあるので、実際の発言や本意と少し違ってしまっている箇所もあるかもしれません。悪しからず。
  • 話の内容を部分的にしかフォローできていません。
  • ( )内は主に自分による補足説明です。

 ※記憶違い・間違い等があれば、コメントでもください。



●植田益朗さん略歴
(※先に知っておいてもらった方が今回のレポートがわかりやすいと思われるので、記載しておきます[当日配られた資料とネットの情報を参照]。)

・1979年にアニメ制作会社の日本サンライズ(現サンライズ)に入社。プロデューサーの仕事をされる。
・2000年にサンライズ退社後、フリープロデューサーに。
・2003年からはアニメ等の企画・製作・販売会社のアニプレックス統括チーフ・プロデューサー。
・2010年6月からはアニメ制作会社のA-1 Pictures代表取締役社長。

アニメ制作会社、フリー、製作・販売会社(ビデオメーカー)と複数の異なる立場からアニメのプロデュースの仕事をされてこられた方です。
今まで「ガンダム シリーズ」「バイファム」「シティハンター シリーズ」「犬夜叉」「おおきく振りかぶって」「黒執事」「青の祓魔師」「FLAGS」等、数々のヒット作・話題作を企画やプロデュースされています。


※司会は前回セミナーと引き続き、漫才師のサンキュータツオさん。台本ほぼ無しとのことでしたが、会話の沈黙も無く次々と話題を振り、話を聞き出されてました。
 今回のレポートはわかりやすくするため、話した順番通りでなく、内容毎にまとめました。

●プロデュサーの仕事や作品等に関して

・略歴から今までの人生を振り返って:
 映画が好きだったが(日本大学芸術学部映画学科シナリオコース卒業)、アニメを職業とすると思ってなかった。不思議な出会い。
・現場の仕事が一番面白い。
・「ガンダム」(第1作目)について:
 「ガンダム」をやってなかったら、アニメ業界に残っていなかったかも。強烈だった。
 ソフトのもっている強さ、既存のものにとらわれずにチャレンジしていくことを学んだ。例)当時は、子ども向けっぽい作品でないなどと関係者からいろいろ批判があった。
 やっているときは非常に苦しかった。
・サンライズ退社について:
 行き詰まり感があった。「ガンダム」を超える作品とかできない。自分でつくりたいものもあった。
・企画からつくりあげるまで一番苦労すること・気をつけることについて:
 ターゲット(ユーザー)を意識することを一番考える。
 やりたいことをシンプルにする。何を一番ターゲットに伝えたいか。
・自分は、新しいものが好き、チャレンジすることが好き(全話ネット配信した「FLAG」[2006年]なども例に)。
・制作の仕事(←プロデュース、企画、制作進行等かな?)で求められる人材について:
 明るく元気で気の利いた人がいい(←サンキュータツオさんから”オタクにとってそれは3重苦のよう”とツッコミが(笑))。
 あと自分のやりたいことをもっている。

・作品は観はじめたら、最後まで観て欲しい。
・時代の気分を敏感に感じることは昔から大事だと思っている。
 しかし、今、流行っているものを容易に採り入れてはいけない(←富野由悠季[富野喜幸]監督の言葉)。
・人間の心は内なるものに向かっているときと外に向かっている時がある。
 今後は外に向かうようなイメージが広がる作品をつくっていきたい。地球の外に向かっていく作品など。


●A-1 Picturesに関して

・来た仕事はだいたいやる。
・A-1(A-1 Pictures)らしさについて:
 一つ一つ丁寧にやっている。それは大事にしたい。
 丁寧に出来る理由は、ギリギリまでやっているからでは? スタッフが優秀だからでは?
・業界No.1になろうと思っている。何のNo.1かは敢えて言わない(笑)。
・A-1は新しいビルなのできれい。
・作画机は特注で1.5倍(←1.3倍だったかも?)くらい広い。
・A-1つくる際、3Kの職場にしないように志した。
 アメリカのアニメーションスタジオの職場にも視察に行った。アメリカは土地も広いし日本とは職場環境が違った。
・A-1の職場環境に関しては、非常に好評。
・立ち上げ時、人が来てくれるか心配だった。
・アニプレックスからは勝手にやれと言われた(A-1はアニプレックスの株式資本100%の会社)。やるからにはいいものつくってねと。
 最近はアニプレックス以外の(受注)作品がいいので、白い目で見られたりする(笑)。(植田さんは、アニプレックスの常務も兼任)
・東日本大震災後、ソニー(親会社のアニプレックスはソニー傘下)のNPOで自社のアニメを被災地で上映してもらっている(「ぜんまいざむらい」等子ども向けの作品のよう)。
・A-1の社長になって:若い人がいかにやる気を出して仕事をしてくれるかが私の仕事。
・ガンダム、エヴァに続く歴史に残る作品をつくりたい。


●アニメビジネスに関して

・どういう風に(ネット)配信を絡ますのが作品にとってよいのか毎作品考える。
・配信してもしなくてもDVDの販売に影響ないのでは?
・日本のDVDは高い。価格下げるのも検討しているが、現状は売上変わらないので。
・パッケージが売れなくなる時期が来ることも考え、どのように商売をしていくか考えろとプロデュサーたちに言っている。
 それに対していろいろ手法はあるが、作品毎に変えていく方法。


●アニメ制作業界の現状とこれからに関して

・アニメ制作の労働状況について:
 各社の努力だけではもう限界。
 ビデオメーカーにもっとお金を出して欲しい。でも採算などで限界あるなど難しい。
 法律で決めてくれるとか。
・現状の業界について:
 ビデオメーカー主導の(資金)回収なので作品の範囲が狭くなっている。
 TVの力が弱くなった。ゴールデンタイムでほとんどアニメがなくなった。
 そのため、多くの人と向き合える作品やそれをつくるスタッフがいなくなった。
・国の法律で各TV局のゴールデンタイムでアニメ作品を1番組、最低2クール放送するようにしてほしい。時限立法で3年くらいとか。
 極端な話だけど、それくらいのことをやってほしい。国もいろいろやっているが。
・10年後の業界に関して:
 アニメは無くならないと思っている。ビデオメーカーは特に要らないとされ、アニプレックスは無くなっているかもしれないけど、A-1は残っているだろう。

○アニメ制作の町(?)構想
・アニメ制作を商売として成り立たせている人は、(日本では)1万5千人くらいでは?
・1か所に全アニメ制作会社が集まって、町やテーマパーク(←うろ覚え)のようにするのはどうか?
 住居や老人ホームもある。
・何を残していくか、伝えていくのかが難しい(アニメ制作のテクニックなど)。
 一世を風靡した人も人知れず去っていく。そうしたことを防ぐ、技術を伝えるためにも1か所に集まるのはいいのでは?
・クリエイターが集まって、ブランディングした場所にする。


●受講者とのQ&A

Q:シニア向けアニメについて。
A:団塊の世代は、いいものであればお金を払う人たち。
 目が悪くなるので、(作画を)1コマ打ちでなく止めとかで(笑)。

Q:アニメを一般にも理解してもらうためには?
A:アニメはサブカルに近いのでメインストリームに出なくてもよいのでは?と思っている。
 幅の広い作品がアニメの地位を上げていくと思う。

Q:プロデューサーとして気をつけること、フリーのプロデューサーとして気をつけることについて。
A:TV局のプロデューサーとして:クリエイターは自信があるようで無いところがあるので、褒めないと力を発揮できない。
 フリーになった瞬間、人が集まらなくなる。人間関係がわかる。
 日本の場合、会社の看板が強い。その会社の看板を積極的に使うのもあり。
 プロデューサーを目指す人は、いろいろなことを経験して欲しい。

(↓以下、Ustream生放送終了後の話。)

Q:ゴールデンタイムでアニメをやるとしたら、どんな作品をやりたいか?
A:オリジナルでSFで宇宙に向けた話。

Q:A-1のライバル会社は?
A:ライバル、目標はたくさんいる。これっていうのは無い。
 自分はポリシー無いが、スタッフが面白がれるものをつくりたい。

Q:A-1の作品を3D化したいか?
A:映画などでやってみたいが、ビジネス的にはまだ難しいかな。

Q:監督をどう育てるか?
A:いろいろな作品をやらせるしかない。
 クール短いと演出難しいので、長いクールの作品があってほしい。そのためにも法律でTV局のゴルデンタイムにアニメ番組を(笑)。
 作品の多様性がなくなって狭くなっている。つくっている方も。
 深夜とゴールデンタイムではアニメのつくり方も違う。


今回セミナーを受けて

植田さんの話から、2006年の初TVシリーズ制作以降、数々の注目作・人気作をつくってきたA-1 Picturesのことが少しは知れ、よかったです。
親会社のアニプレックスとの関係も思っていたより自由そうだったり、自社ビルを建てる際、3Kの職場にしないように志し、そうした職場環境をつくった話も印象的でした。

アニメ制作会社(受注側)とビデオメーカー会社(発注側)という異なる立場のプロデュサー経験をもたれていることから、その関係や問題点等についての話もいろいろ聞けるかなと思っていましたが、逆に双方の事情をわかっていられるためか、厳しい意見や突っ込んだ話は少なめでした。その点は、少し期待していただけに残念でした。

セミナーのお題「アニメコンテンツとのつきあい方 ―アニメ制作は変わるのか―」にかかわることに関して、今後のアニメ制作業界・作品をよくしていく方法として、各アニメ制作会社が1つの場所に集まり一つの町・コミュニティーをつくるという構想が大胆で面白かったです。夢のような計画で実現は諸々大変そうに思えますが、もし実現してうまく機能し継続できればアニメ制作の継承・発展、制作者の福利などにも大きく貢献しそうで素敵かなと。
一方、国の法律によって解決を希望するものとして、制作者の賃金等の労働状況、TV局ゴールデンタイムのアニメ番組義務化のアイデアを話されていましたが、前者は昔から指摘されていますがなかなか改善できない問題、そして後者は日本の現状では実現はかなり厳しそうに思えます。

現在の商業アニメ制作は、人も資金も大量に必要としますが(TV1クール作品の制作費だけで1億前半~2億くらいは掛かると思われる)、ユーザー(視聴者)側の人気・注目・支持が高く、熱心なファンも大勢います。
DVD・BD等のパッケージ販売で資金を回収し利益を上げるビジネスモデルがいつまで主流として続けていられるかわかりませんが、今後、どのような方向になっていくか興味深いです。

個人的には、制作側の人々へささやかでも何らかの報酬・評価を受け取ってもらう一手段として、ユーザーが各制作者のプチ・スポンサーになるような、各制作者に投げ銭をするような方法を期待を込めて想像してたりします。ITを使い、例えば「いいね!」ボタンなどを押すような簡単な感じで。
以下、その想像を荒いですが箇条書きで。
――――――――――――――――――――
○出来れば作品の各制作者の担当パートをわかるように表示させる
・フォークソノミー的な仕組み(全てのユーザーで情報を追加・修正していくような仕組み)も使用して生成する。
・ニコニコ動画的な再生動画のタイムライン上にコメント表示とかがベストかな? 切替で複数の内容別のコメントが見られるようにする。一般用、担当制作者情報用、評価用、プチ・スポンサー(投げ銭)用とか。
・OPやEDのキャスト・スタッフの各名前にも当該ページ(情報、評価、プチ・スポンサー用がまとまったページ)へのリンクを付けておく。
・その情報が蓄積・整理されてデータベース的にも使用できるように。

○お金的なもの(お金と同価値に使えるポイント的なものとか)と評価・気持ちを各制作者へ届けられる仕組み
・一人一人では少額でも集まれば少しはましな額になるかも。
・ユーザーの評価とメッセージも表示(再生動画のタイムライン上にも簡易表示)。
・制作者の人は登録してもらえば、個別にお金的なものや評価・メッセージを受け取れる。

○各ユーザーの後援(投げ銭)・評価情報も共有・参照出来る仕組み
・誰をorどんな作品をorどんな回をorどの瞬間をどの程度後援・評価しているか等。
・その情報が蓄積・整理されてデータベース的にも使用できる。
――――――――――――――――――――
ユーザーや配信作品も多くCGMやSNS的機能もあるニコニコアニメチャンネルなどに取り入れられたら、盛り上がりそこそこ機能しそうな気がしています。
制作費の巨額な資金を集める事は無理そうですけど、現状、視聴者の各制作者に対するポジティブな評価はまだまだはっきり現れにくい・当人には届きにくい印象があるので、言葉や報酬として直接届けられるのはよいかなと思います。
基本はポジティブな評価以外付けられない仕組みがいいと思っています。それでも他人と比べられる結果にもなるので嫌がる人もいるでしょうね。ポジティブだとしても他人に評価されたり注目されるのを嫌がる人もいるでしょう。
そして問題や場が荒れる等が多々起きそうなお金的なものや評価を扱うので、その辺りはかなりうまく注意しないといけないと思われます。
似たようなことを考えている人はいると思いますけど。
もしかしてそういう行為は、法律的に問題あるのかもしれませんが、特に調べてないのでわからないです。

セミナーでは、自分が放送当時大好きだった「銀河漂流バイファム」をプロデュースされたときの話もちょっと聞きたかったですが、残念ながらありませんでした。
植田さんには、今後もアニメ制作業界やよい作品が世に出てくるために頑張っていただきたいです。
そのうち制作される可能性があるかもしれないA-1 Picturesの宇宙を舞台にしたSF作品も楽しみにしておきます。もしかしたら富野由悠季監督新作だったり? でもやはりサンライズの制作かな?

次回の代々木アニメーション学院の業界セミナーは、来年の予定とのことです。


※2012/3/18:最後の方の文章追加・修正

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この記事に対して問題等ありましたら、連絡先ページのメールアドレスまで。

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