辻田邦夫さんトークイベント「第71回アニメスタイルイベント 生誕50年記念! 色彩設計おぼえがきSPECIAL」(2013.4.18):レポート

2013年04月21日(by キョウ) コメント0
4月18日(木)に「第71回アニメスタイルイベント 生誕50年記念! 色彩設計おぼえがきSPECIAL」に行ってきました。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。
色彩設定[Wikipedia]の仕事内容について前から興味はあったのですが、大まかにしか知らず、実際の具体的な話も聞きたいと思い、参加してみました。
以下、自分が興味を感じた点の部分的なレポートです。

【注意】
  • 自分が取れたメモをもとに+記憶で補足してまとめています。実際の発言内容や本意と少し違ってしまっている箇所もあるかもしれません。悪しからず。
  • 話の内容を部分的にしかフォローできていません。
  • ( )内は主に自分による補足説明です。

 ※記憶違い・間違い等があれば、コメントや連絡でもください。



●はじめに

・ゲストとして、永井留美子さん(『モノノ怪』『TIGER & BUNNY』色彩設計)、山崎みつえさん(『八犬伝 ―東方八犬異聞―』監督、『輪るピングドラム』助監督)も出演。
 司会・進行役はアニメスタイル編集長の小黒祐一郎さん。
・会場は満員でした。女性率が6~7割くらいと高かったです。
 辻田さんの人望か? 色彩設定や関係の深い彩色等の職種は女性率高いと言われているため? ゲスト2人が女性で出演者3人がそれぞれ携ってきた作品が女性人気も高かった作品も多いため?
 会場で挙手してもらったところ、参加者に彩色・仕上検査 ・色指定・色彩設定の職種に就かれている人が結構いたようでした(3割くらい?)。
・辻田さんの話を中心にメモを取ったため、ゲストの方の話はあまりメモしてません。
・阿佐ヶ谷ロフトAの場所を勘違いしていて、早めに着くはずが5~10分くらい遅れてしまいました。そのため、イベント冒頭は聞けてません。


●第1部 アナログ時代(デジタル化前のセルアニメ)の仕事に関して

・今はデジタルで色は無限に使えるが、東映(東映動画)の仕事は120色+αだった。
 TV作品だと120色。劇場作品だと、+αの色が追加。
・絵の具自体の色はもっとあったが、色絞らないとその分買わないといけなくなるので費用的に厳しくなる。
 絵の具の1本、スタックが2000円くらい、太陽カラー(太陽色彩?)が1600~1700円くらいだった。
 スタックは乾きにくい、太陽が主流だった。東映はスタックだった。
・色数を抑えた中でどうつくるか、どう表現するか、どう組み合わせるか。その頃からやってきた。
・デジタルのときより、色の組み合わせを考えていた。
 どう見えるのか、かなりイメージしていた。完全にイメージしてから色を塗っていた。
・乾くまで待つのに2時間くらい掛かる。
・絵の具のナンバーで話せる人がいると同じ時代の人だと思える。
・TVのフィルムは16mmで劇場は35mmなので、劇場フィルムでは色の再現性が変わる、よくなる。解像度も違うので。
・色鮮やかな色の方が子どもに受ける。
・太陽の絵の具は、中間色多かった。彩度抑え目。
 東映以外はほぼ太陽だった。90%くらい。
・90年代に東映も彩色を海外へ出すようになった。
 そのときには、深みを与えたい色にしたいときは、太陽で塗ってもらえる海外に出して、演出意図に応じて振り分けられるときは分けていた。
・今はパソコン上で背景の上に色を合わせられるが、昔は背景の上でカラーチャートを載せて検討していた。

 辻田さんが使用されていた絵の具のカラーチャート表や短冊カラーチャートを会場スクリーンで映しながら説明してもらいました。

※絵の具の詳細な話 参照
WEBアニメスタイル | 色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]第8回 昔々……(6)セル絵の具は甘い香りがステキ
WEBアニメスタイル | 色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]第9回 昔々……(7) 禁断の「X」絵の具

※短冊カラーチャートの話 参照
WEBアニメスタイル | 色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]第13回 昔々……(9) 短冊カラーチャートと絵の具マニア


●第2部 デジタル時代の仕事に関して

※山崎みつえさん(『八犬伝 ―東方八犬異聞―』監督、『輪るピングドラム』助監督)は第2部から出演。
 緊張するのでお酒を飲んだためと話されてましたが、小黒さんと永井さんがあまり話に入れないほど、ハイテンションでした(笑)。
○山崎さん談:
・辻田さんとは話が出来る。制作上でお互い意見を言い合わせられる。それ以外での話題でも。
・『輪るピングドラム』で一緒に仕事をやり、その後に『八犬伝 ―東方八犬異聞―』でお願いしたが、一度断られた。どうにかやってもらおうと準備し、二度目にお願いしするためお会いしたときは、こちらが話す前に”やる”と言っていただけた。

・『八犬伝 ―東方八犬異聞―』ではビジュアルコーディネートという役職。
 色彩設計を超えた仕事。画面構成等までも。
 演打ち(演出打合せ)段階、いろは打ち(色彩と背景打合せ)段階、撮打ち(撮影打合せ)段階でも入る。全体的に見渡す仕事。
・『輪るピングドラム』で上記のような仕事の考え方を確立した。
 『輪るピングドラム』のつくり方は、これは無いよねという感じをスタッフ間で確認しつつつくり上げる方法。
 (『輪るピングドラム』の出来上がった絵をスクリーンで観させてもらいながら話してもらいました)
・色は演打ちで決まってくる。そこで考える。
・アニメをやる前は(実写の)演出をやりたかった。
 そういった学校も通っていたし(日大芸術学部映画学科)。


●第3部 Q&A

Q&Aに入る前に阿佐ヶ谷ロフトAスタッフからケーキと花束の誕生日プレゼントが辻田さんに渡され、会場の皆でお祝いしました。

会場からの質問
Q:視聴環境の違いについてどう対応してきたか?
A:
・デジタル放送になってからの方がだいたい同じになっているだろうと思えるようになり、楽になった。
・液晶TVが出てきた時代は、ブラウン管TVとどちらに合わせたらいいか難しかった。
・現在、TVシリーズは実際はA4サイズ(動・原画、背景)で制作。解像度1280×720。
 劇場版はB4サイズ。解像度1920×1080。
・デジタルから映画のフィルム化のときの修正にも金額掛かる。
 『ドラゴンボールZ 神と神』(2013年3月末公開)ではフィルム上映はもう10館くらいだったのでは?
・A4サイズで制作しているものを50インチとかのTVで視聴されてしまう。
 画質・密度等、画面としてどう成り立たせるのか? これからの課題。

Q:時代による色の変化について?
A:
・今、流行っている方向は気にしてない。
 作品や演出によって変える。
・『輪るピングドラム』は、幾原(幾原邦彦)監督に深夜にTVをザッピング中に目に留まるような画面にと言われた。

Q:時間も費用も掛けてもいいならセル画で制作するか?
A:
・そういう発想は無い。
 時間が掛かり、表現の幅・今後の可能性にも限りがあり、メリットが無い。

Q:セルからデジタルの移行時に、デジタル彩色だと画面がまぶしくチカチカして見えたことがあったが、チェック等はしていたのか?
A:
・作業上でチェック出来る環境が無かった。
 どういうチェックをしたら大丈夫かわからなかった。
・TV局側はきれいになったとの反応だった。鮮やかでクリアになったと。
 局側もそういうオーダーだった。

Twitter上で募集した質問から
Q:東映動画からフリーランスになった理由?
A:
・東映の社員ではなかった(年棒的な契約?)。
 ”外の制作もやりたい。東映にはマネジメントだけやって欲しい”とお偉いさんに相談したが、NGだった。
 それでフリーランスになった。

Q:自分が思ってないように改変されてしまうことはあるか?
A:
・自分が思ってないようになっていることは無い。
 思っている以上になっていることはある。
・デジタルデータなので、制作のどこの段階でも触れてしまう。
 その恩恵を受けつつも、どういう風にコンセンサスをとっていくかが重要。

Q:50年間で一番印象に残った色は何か?
A:
・自然が織り成す色。
 僕らでは出来ない色だ。
 そういったものから、どれだけ自分で拾っていけるか。
・日が沈んだ後、太陽の残照でふわっともちあがった景色が好き。
 1日が収まっている感じがよい。


●最後に辻田さんから

・体験・経験が映像・作品に染み出てくるもの。それで成り立っていく。それが僕らの仕事。
 今日の会場の様子、会場の照明、その光の下の人の様子なども今後の作品に出てくるかも。
・60になっても同じようにやっている。自由につくっている。


イベントに参加して

今回のイベント告知ポスター的なものやシンボルマークを辻田さんと一緒に仕事をされた方々(追崎史敏さん、越阪部ワタルさん)が素敵に制作してくれていたりと、よい感じの生誕イベントでした。

第1部のアナログ時代の話で、永井留美子さんと絵の具のナンバーで頻繁に話されてたのが印象的でした。お二人とも絵の具ナンバーに愛着があるのだなと思いました。
話を聞いて、各スタッフ間でコンセンサスをきちんと取られて仕事をされている感じが頼もしかったです。

個人的にデジタル時代の制作の話をもっと聞いてみたかったです。
また後から思ったのですが、どんなところに惹かれて仕上げ(彩色)の道に入られたのかとか、どのような感じで色のイメージが浮かんでくるのかとか、イメージが浮かばないときはどう対応するのかとか、アニメ塗り独自の色の使い方のポイントとか、色に対する個人的なこだわりについて等も聞いてみたかったです。

今回のイベントでは話に出ませんでしたが、辻田さんは、仕上げプロダクションの入社1年目に大病をし、右半身不随となられたそうです。
リハビリでほぼ正常な機能を取り戻されたそうですが、どうしても利き腕の右手に障害が残り、彩色等の仕事から管理・進行業務とセル検査が中心になり、少しずつ色指定の仕事もするようになられたそうです。
その大きな挫折をどのように乗り越えられたのかも聞いてみたかったです。
※参照
WEBアニメスタイル | 色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]第2回 昔々あるところに……(1)

今回のイベントに関するツイートをTogetterでまとめてみたのですが、辻田さんは皆さんのリプライにほぼ返事されている感じで、とても忙しそうなのにすごいと感心させられました。
今後もお元気に自分で道を付けていくような新しい仕事をしていかれてください。


※参照
WEBアニメスタイル | 色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]バックナンバー
 (辻田さんの経歴や携われた作品の仕事内容が詳細に書かれています。自分も部分的にしか読めてませんが)

Togetter – 辻田邦夫さんトークイベント「第71回アニメスタイルイベント 生誕50年記念! 色彩設計おぼえがきSPECIAL」まとめ
 (自分でまとめてみました)

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