フジテレビ ノイタミナ編集長・山本幸治さん セミナー「変わりゆくテレビアニメ ―いままでと、これから。―」 (2011.7.10):レポート

2011年07月13日(by キョウ) コメント0
7月10日(日)に代々木アニメーション学院主催 業界セミナーvol.1「変わりゆくテレビアニメ ―いままでと、これから。―」に行ってきました。
講師は、フジテレビ ノイタミナ編集長・山本幸治さん。会場は、代々木アニメーション学院 東京本部校。
その日の内にまとめ等がネットに上がっていましたが、メモ取っていたのでレポートします。
会場はほぼ満員でした(定員の120人位?)。

【注意】
  • 自分が取れたメモをもとにし+記憶で少し補足しているので、話の要点をまとめた感じの箇所が多いです。
  • そのため発言した人の本意と少し外れてしまった点もあるかもしれません。悪しからず。
  • 話の内容を部分的にしかフォローできていません。
  • ( )内は主に自分による補足説明です。

 ※記憶違い・間違い等があれば、コメントでもください。



●代々木アニメーション学院 学院長の挨拶

・来年設立35周年になる。そのプレ(行事)というわけではないが、今回、セミナーの第一回目になる。
・学院は現在17学科ある。それぞれの各業界の人を招いてプレゼンス(存在感)を獲得したい。


●山本幸治さんの話
(※司会は漫才師のサンキュータツオさん。自分の事をバカなオタク代表と茶化して紹介してましたが、司会進行も慣れた感じにスムーズで頭の回転も早そうな印象の人でした。)

・シナリオ打ち合わせはだいたい出る。アフレコはあまり行かない。
 企画によって入り方は違うが。
・製作委員会の座組もやっている。(参照:座組(コンテンツ・リプロデュース)
 ビデオメーカーには少し煙たがれる。
 ブランドを維持するためには(自分たちが座組をする事は)必要。
・企画を出すのは自分たちからは半分くらい。
・企画の選定基準について:1.メジャー原作もの(「のだめ」etc)、2.社会派オリジナルもの(「東のエデン」etc)、3.びっくりもの(?)・異ジャンルもの・尖ったもの(「空中ブランコ」etc)
・1回ノイタミナは方向転換をしている。
 はっきりここからと決められないが、「東のエデン」辺りからか? 一般性にオタクカルチャーを取り入れる方向。
・自分のプランニングは3割位しか通らない。前は1〜2割だった。
・スポンサーの優先順位がDVD売上が一番でない事がある。
・アニメ製作はパワーバランス(力関係)少ない。行政(? ←政治的な活動の意味かな?)少ない。
 例として、今回、あの事務所の人を使わなかったから、次回、使うetc。
・皆が出来る訳でないが、その作品をつくる制作会社にスポンサー1社で出資してくれる状況がよい(理想?)かなと思う。
・前は売上(BD,DVD)無くても視聴率よかったらOKだった。
 今は全体的にTV視聴率が下がってきているので、そういうわけにもいかなくなってきている。
・視聴率がよくて売上もよいのが、もちろんよいのだが、自分はブランドを一番大事にしたい。
・「のだめ」の一期目は、2chに貼られている数字より3倍くらい売れている。2chで貼られる数字は初動なので、その後の数字が加算されていない。
 「墓場鬼太郎」もNHK朝ドラ「ゲゲゲの女房」の影響もあり、バックオーダーがかなり来た。
・2chは最近見ている。コンプライアンス的にまずいので(←会社側からチェックしてくれと求められているのかな?)。
・自分はコア向け(志向)。それではいけなかったので、一般要素を取り入れた。
 コア向けに軸を移してきている。
・(IS(インフィニット・ストラトス)の話題が司会者から出た流れで)IS全話観てる。好き。
(上記で言われた”コア”という意味が、設定・演出・作画・シナリオ等が凝ったクオリティの高い作品好きという意味か、アニメオタクのコアの一極である萌え好き周辺の”コア”の意味か説明無くわかりませんでした。IS好きと話されてましたが、たぶん前者のような感じに思われます。もし萌えキャラ大好きだったりしたら、意外です(笑)。)
・つくる人に対して:フリーの集団的なやり方がうまくいっているけど、もう少し組織立った方がよいような。シンプルにつくれる人は強い。自分たちはいろいろ考えるので。
・ノイタミナの独立性を高めたい。フジテレビでなくても通用する位のものに(フジテレビから出る事を目標としている訳でない)。
・10月からローカル局でも観られるようになる。


●受講者とのQ&A

Q:神山監督の次回作はあるか?
A:(自分にとって)特別な人なので是非やりたい。

Q:「TIGER & BUNNY」(現在放送中)について。
A:面白かった。ちゃんとビジネスとして出来ているか、継続出来る(ビジネスの)スキーム(枠組みをもった計画)あるかわからない。

Q:TVをやらずに劇場版をやる事はあるか?
A:ジブリのようにならなければ、できない。
 やるとしたら作品ベースで。

Q:スポンサーのお金の出し方に関して、キー局とU局の違いについて。
A:U局は圧倒的に安い(←放送枠の料金かな)。DVD売上(の目的)だと効率的。

Q:ノイタミナで町おこし等のイベントや一般に広げる施策等、何か考えているか?
A:一般に広げる事はいつも考えている。施策はしていく。
 「あの花」ショップは、混んでいるけど商品の単価が安いのでまだまだ。
 キャラデザとかの一般性も悩んで決めている。
 制作費は1クールで2億位。
 ビデオメーカーが半分位出す事ある。U局アニメだと1/5位か?
 (追記[7/21]:一部、自分の聞き漏らしがあったようです。上記の”U局アニメだと1/5位か?”は制作費ではなくスポンサー費の事らしいです。
 参照:Business Media 誠:DVDだけではないビジネスを模索したい—-フジ・ノイタミナプロデューサーが語るアニメの今 (5/6)
 自分は、最近はドラマ(実写)の方が、絵空事に見えてしまっている。

Q:ノイタミナショップがアキバでなかった理由?
A:パルコの方から話があった。

Q:ノイタミナ枠の編成と前後の順序について。
A:オリジナル2本の方がインパクトあるだろうとかすごい考えてやっている。思ったよう(な編成)にはならない事もあるが。

Q:「あの花」のEDを「secret base」にした理由について。
A:ソニー・ミュージックの人とメールでやり取りしている中で候補に出てきた。
 賛否半々だったが、最後は”でもこれだね”という事で決まった。
 シナリオ5〜6話の会議で決定。はじめの方で決まっていた訳ではない。

Q:今後どんなジャンルのものをやってみたいか?
A:ガンダム、仮面ライダー、ウルトラマンのようにシリーズ化出来るようなコンセプトがあるものもつくってみたい。

Q:ゲーム業界とのコラボレーションについて。
A:優秀な人が集まっているし、一緒にやりたい。
 既にある人気のあるゲームのアニメ化は考えてない。
 同発的にやるものを今、仕込んでいる(メディアミックス)。もしかしたら、ぽしゃる可能性もあるが。

Q:作品の時間について(「刀語」の1話1時間や15分番組も増えている現状があるが)。
A:週1時間の番組は、それに耐えられる制作会社はない。
 上下段が連動しているのもいいかも。
 今後は2クール増える。

最後に代アニ側の司会の方から質問。
Q:学院の(プロデューサーを目指すような)生徒たちに対して、これだけは押さえて欲しいという点は?
A:アニメ製作は分業制だが、全体像を押さえて欲しい。


今回セミナーを受けて

ノイタミナ枠は、テンプレ的なTVアニメと違う新鮮さを感じる作品が多く(映像面でもストーリー面でも)、ずっと好きな枠だった事もあり(作品により好き嫌いありますが)、今回、受講しました。アニメプロデューサーが講師のセミナーは初めてでした。
セミナーのお題「変わりゆくテレビアニメ ―いままでと、これから。―」については、あまり多くの話がなかったですが、ノイタミナ枠の考え・姿勢等について興味深い話を聞けました。
製作委員会の座組もしシナリオ会議にほぼ出席しキャラデザにも細心の注意を払う等、自分が思ってた以上に作品内容に入り込み、想像以上にブランドを大事にしていた事がわかりました。
だからこそ、ノイタミナ枠の独自性が出ていた・守られていたのだなと思われました。
今後も他のTVアニメとは一味も二味も違う新鮮に感じる作品を企画・製作される事を期待します。

あとビデオメーカーの制作費出資がノイタミナでは半分位の事もあるという話は意外でした。
ノイタミナでは視聴率がよければDVD等の売上をそれ程気にしないという主旨の話を以前にも読んだ覚えがあり、今まで評価は高くてもBD・DVDの売上が悪い作品もそこそこあった印象があったからです(6月末に終わった「あの花」BD・DVD1巻の初動売上はノイタミナ史上最高でしたが)。そのため、製作委員会以外のスポンサー(作品関係の販売等をしないスポンサー)が少なからず付いていると思っていました。ノイタミナの場合は、広告代理店と契約するスポンサーかな?
しかし、今回の話にも出ていたように、全体的にTV視聴率が低迷している中、ノイタミナ枠でもそういったスポンサーが付き辛く、最近はBD・DVD売上で制作費回収という方向が強くなったためでしょうか? 憶測ですが。




この記事に対して問題等ありましたら、連絡先ページのメールアドレスまで。
何かあれば、コメントでもください。

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今年入って、2回目の更新です。
美大卒業生たちの短編アニメーションを観てよかった感想とか、「あの花」最終回だけ個人的に付いていけなかった事とか、TVアニメのストーリーに関して気になっている事とか書こうかなとも思いましたが、よい文章を書けると思えず、一から文章書く気も起きず。

ところで、アニメーション監督術の講義は去年の12月以降まだ1回も行われていないので、レポートもまだ無しです。
やはり学校側の伝手も全てなくなり、誰も講義に来てくれなく、残念な放置状態なのかな?
追記[7/19]:8月実施で調整中との連絡メールが小さな学校から来ました。