アニメーション監督術 第3回 原恵一監督:レポート

2009年12月1日(by キョウ) コメント0
11月21日(土)に[アート・アニメーションのちいさな学校]のアニメーション監督術の3回目を受講しました。
今回は、原恵一監督。前回同様、アニメーション研究家の原口正宏さんが聴き手で進行。
会場は満員でした(45人位か。別部屋でモニタ視聴で受講した人がいたかどうかは不明)。
今回はメモも多く取っていたし、少し長めの記事です。講義後の懇親会での話も。
※記事中に監督作品のネタバレあります。

【注意】
  • 正確にメモを取っている時間がなく、自分が取れたメモと記憶をもとにまとめています。
  • メモがうまく取れず、記憶から補足し、だいたいの要点でまとめている箇所もあります。
  • そのため監督や発言した人の本意とは少し外れてしまった点もあるかもしれません。悪しからず。
  • 話の内容の全てをフォローしていない&できていません。

記憶違い・間違い等があれば、コメントでもください。


※講義前に「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」を上映
学校の計らいで視聴希望者向けに上映してくれました。自分は未見でレンタルしようとしていましたが貸出中でずっと見られなかったため、助かりました。
そういう結末にするとは。ずるいけど、泣きそうに。


以下、講義での話。
●「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」について
(終わり方の東京タワー(20世紀博のタワー)のシーンをスクリーンで視聴)

東京タワーについて
・東京タワー(20世紀博のタワー)については、「河童のクゥと夏休み」がつくれるかわからず、他に思い浮かばず、タワーにした。
 「クゥ」制作のとき、他のアイデアを出そうと思っていたが、特に出なかった。
・東京タワーは、東京の建物の中で一番好き。
 子どもの頃、怪獣映画好きだったので(怪獣映画ではよく出てくる建物なので)。実在の存在だけど、フィクションの世界でも出てきて魅力的。

・つくっているときは、ケン&チャコ寄りの心情だった。絵コンテもケン&チャコ寄り。
・このときの制作の流れは、プロット(あらすじ)提出(代理店に)→絵コンテ作業(脚本は起こさず)で進行。自分が劇場用監督担当した2本目から同方法。
・キャラクターデザイン&原画の末吉裕一郎さんには、信頼してお任せ。
・タワーのシーンの最後の方でしんちゃんの線が荒くなるのは、大まかな指示を出してお願いしていた(末吉さん原画)。
・ケンの足を掴むシーンのしんちゃんの汚れはセル画にエアブラシ使用。その時は時間もあり、自分もエアブラシ着色箇所を綿棒とかでリテイクしていた。
・今まで、本郷さん(本郷みつるさん? 後で調べたけど、どういう形で参加していたかわからず)に、先に最後のシーンを渡し、そのシーンはクオリティを上げてもらっていた。
・絵コンテもパーツに分けてつくり、順序替えて制作してもらっていた。
・「クゥ」では、順序通りに原画制作してもらった。


●「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦」に関しての話題

※タイムスリップが映像効果もなくあっさり行うことに対して、当該シーンの映像を観た後、原口さんの問いから監督が答える。
・長い事つくっているうちにシンプルになってくる。FIX画面になってくる。
・若い頃は奇をてらったアングルやカメラワークとかも使っていたが、だんだん要らないと思ってきた。むしろ無い方がいいと思うように。
・魔法少女もののバンクの変身シーンとかは嫌いだった。気持ち悪い(笑)。リアルじゃない。
・リアリティがある、自然な感じの演出でつくってきた。


●「河童のクゥと夏休み」に関して

・自分なりの誰にも求められていない自分が観たいものをつくりたかった。
・アニメの派手な感じのものは、元々興味が無かった。
・アニメーションに求められるものを一切やりたくなかった。
・本当に(自分の)夢の企画だった。20年間思っていた。つくれないと思っていた。
・少年ものをやりたかった。原作に出会い、その原作に自分のアイデアを盛り込みたかった。
・登場人物で、いかにもの良い子、いじめっ子とかはやりたくなかった。現実的なものをやりたかった。
・思春期前の恋愛感情前的な感じのものも取り上げたかった(←だいたいの感じの要約)。
・エニックスのアニメ企画に応募した「かっぱ大さわぎ」ではじめてあらすじを書いたが、かなりオリジナルの内容になっていた(佳作を取る)。

パイロット版「かっぱ大さわぎ」について(スクリーンで視聴)
・主人公:康一の父が眼鏡を掛けている
 →魅力がなかったので、完成版では眼鏡なしに
・座敷童が人形そのものなキャラクターデザイン
 →キャラクターデザインの末吉裕一郎さんにアイデアがあり、それがとてもよかった。それが完成版のデザイン。
・紗代子は、(原作にないキャラだが)パイロット版の段階で重要な役になることにしていた。
・菊池紗代子(キクチサヨコ)の名前は、つげ義春さんの漫画が好きだった事から名付けた。登場作品『紅い花』でいつもフルネームで呼ばれるのが面白かった。『紅い花』も男の子と女の子の微妙な性を意識する内容だったので。以上の事から無理矢理に(笑)。

プールサイドのシーン(康一と紗代子が2人で話すシーン)について
(以下、「河童のクゥと夏休み」の絵コンテをスクリーンで観ながら)
・2人の微妙な距離感は、すごい考えた。
・康一の(紗代子を意識したことからくる)無駄な動きは、紗代子と対比させたかった。
・意味のない話(会話?)でいいシーンにしたかった。
・自分は、遠野、花巻には前に何度か行っていた。
・自分が小5くらいは、陰気な少年でインドア派だった。
・プールサイドのシーンの紗代子の顔のエクボは、鉛筆で描いたものをデジタルで濃度調節した。

音楽を抑制している事について
・派手な演出が嫌いな事もその理由。
・アニメ作品は、音楽の使用が多いので、もっと整理できるのではと思っていた。
・「クゥ」では少なくしたつもりだったが、まだ多かったかなと。
・絵コンテ描きながら、音楽の事も思いつき記入していた。転調等も記入。

カメラ位置などについて
・カメラの目線(カメラの位置)は特に決めていない。アングル等も。
・ハッキリしたスタイルをもっていない。ハッキリしたスタイルをもっている人がうらやましい。
・自分は、その都度悩んで決めている。シチュエーションやキャラの心情などを考え決めている。
・アップは好きではない。

キャラのリアルな仕草等について
・絵コンテを描きながら思いつく。
・「クゥ」をつくっているときは、子どもを見たり、話を聞いていたり観察していた。
・普段から人の話や行動をよく見ている。電車の中とかで。面白い。
 そういう観察した事を作品に生かしている。(そういうシーンで)わかる・成る程と思わせたい。
・(制作する)若い人は、電車の中などで携帯画面を見てるのでなく、周りの人間を見たり、話を聞いた方が良い。自分は携帯持ってないが。

キャラクターのイメージについて
・クゥには具体的にモデルない。
・キャラクターデザインの末吉さんには、少年少女のキャラのイメージを伝えるため、塩田明彦監督実写映画「どこまでもいこう」を観てもらった。
 この作品は、絶対観た方がよい。末吉さんも感動。
・「クゥ」は「どこまでもいこう」超えを目指した。
・パイロット版より前に末吉さんが描いたラフデザインだと頭身低く子ども向けアニメっぽかった。
・カメラにしてもキャラにしても実写っぽくした。実写を参考に。

紗代子が自宅マンションで靴を捨てるシーンについて
・敢えて説明入れず。わかってもらえなくてもよかった。
・そのような表現するのは、勇気がいった。不安があった。
・公開後、そのシーンに引っ掛かってくれる人がいてシメシメと思った。
・捨てた靴が誰のかはわからなくてよい。康一が一番事態をわかっていない。
・(監督としては)その靴は紗代子の母の新しい恋人のもの。
・紗代子にはそういう生臭い部分が日常にある。
・その位の年齢の男子と女子の精神年齢の差も現したかった。

シーンのアイデアについて
・昔の日本映画では驚く(驚かされる)シーンが多い
・アニメではアイデア得られない。
・過去に観た邦画・洋画が頼り。
・このシーンはあの映画のシーンでとかはやらない。無意識的にならあると思う。

末吉さんの原画について
・末吉さんは、キャラクターデザインと作画監督だったが、原画をたくさん描いてくれと頼んだ。
 冒頭の江戸時代のシーン、プールサイドのシーンも末吉さん原画。

水のCGについて
・CGの方がリアルになると思った。アニメーター出身でないので、すごい作画をつくろうとかがなかったので。
・手描きだとすごい労力なので、はじめから止めようと思っていた。
・海のCGは難しかった。相当面倒な事を要求した。
・河童は水の妖怪なので、水の作画は手を抜かないようにした。

「河童のクゥと夏休み」作品で達成した事は?
・やっとリアリティある人物描けた。
・(この企画を思いついた)20年前の自分に嘘の付いていないものがつくれたかな。
・「クレヨンしんちゃん」のお陰で「クゥ」をつくれた。「クレヨンしんちゃん」の映画により声を掛けてもらった。
・家族構成がしんちゃん家と同じなのは偶然。
・「クレヨンしんちゃん」映画担当5本目で「クゥ」の話をしようと思ったが、難しかったため、流れた。
・本当につくりたかったのは、これだけだった。
・自分と同じように(本当につくりたいものを)つくれるかはわからないが、つくれることもある。
・企画のときは「全く金の匂いがしない」(←確か)「河童なんて受けない」etcと辛辣な事も言われた。
・受けなさそうだったから、逆にそれでやってみようという気になった。観てみたら、すごいぞと。
・負のエネルギーがあるからつくれるというのはあるが、幸せでもつくれると思う。


●受講生とのQ&A(メモがうまく取れず、記憶もよくないので大雑把にまとめてしまっています。特にQ)

Q:オリジナル企画するときの精神状態については?
A:<「河童のクゥと夏休み」について>
河童マニアじゃない(笑)。木暮正夫さんの原作に惹かれた。
企画を思いついた時代は、漫画原作しかアニメ化できない状況だった。
<映画「クレヨンしんちゃん」について>
「クレヨンしんちゃん」でも、やりたい事は少しずつ出していた。
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」と「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」が転機。やることがなくなっていた。
自分が監督していたとき興行収入は下がっていた。今年が監督最後と言われ続けていた。
(やることがなくなり、そのときは)自分でもあきれるほどダメだった。ピンチ。苦労した。もうダメ。一番やばい状態だった。→針が振り切れた。
自分で枠を狭めていた。外したら(観客に)受け入れられないと思っていた。
プロの”これはダメだね”は当てにならない。プロは皆、こういう病気に掛かっている。自分はそれを自覚しているだけ。

Q:映画「エスパー魔美」の監督のときについて
A:「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」の次にヤバイ状況だった。
映画なので渋い感じを目指した。劇場に行ったら子どもに不評だった。
原作の藤本先生に好印象だったのはよかった。

Q:「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」「河童のクゥと夏休み」で人間が決定的に変わるシーンがある(「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」では又兵衛が死ぬシーン、「河童のクゥと夏休み」では康一とクゥが最後に別れる前後)。そのシーンの演出に関して
A:どっちも末吉さんの原画。どちらも末吉さんから上がったものをそのまま通した。
又兵衛に関しては、なるべく動かさないようにした。死ぬシーンで動くシーンが多いがうまくいったことないので、やめることにした。セリフも敢えて棒読みに。

講義での話は以上になります。


●懇親会での話

実はアニメーション監督術の講義の後、毎回、監督を囲んだ懇親会を設けてもらっています。
自分は受講生に知っている人が誰もいないし、今まで躊躇し参加してなかったのです。でも原恵一監督の話が聞けるのならと、もういい加減、参加しようと思い、初参加しました(先日、「河童のクゥと夏休み」観て、監督作品のファンになったばかりですが)。

【その席での原監督談】
・ジブリが「トトロ」から日本的なものを(キャラや世界に)扱いだしたのはショックだった。こっち(「クゥ」的な世界)に来るなと(笑)。
・「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」では、合戦等の歴史的事実の文献調査がかなり大変だった。
・アニメ業界では、この人のようになりたいと思える人がいない。
・師匠(確かそんな意味合い)は、CMディレクターの中島信也さん。たまに会う。
・たまにとても絵が下手なアニメーターさんがいる。業界で何年も仕事をしている人なのに。スケジュールがとても厳しく、とりあえず絵があればいいというケースが日本ではしばしばあるので、そういう人でも需要があったのでは?
・細田守監督は、どこまで戦略でつくっているのだろう?(笑)

他にも面白い話があったはずですが、書かない方がよさそうw(酒の席の話だし)、記憶があいまいなので、止めておきます。
メモ取らないと、ほんと自分覚えてないこと多いです。


自分は監督に「河童のクゥと夏休み」に関して、2つ質問しました(どこかのインタビュー等で答えてるかな?と思いましたが)。
Q:最後にクゥは、都市の社会では生きずらい&そこでは生きていかないと決め、沖縄に行くのですが、その方がリアリティがあると思い、そうしたのでしょうか?
A:そうです。昔、沖縄は惹かれていたが行ったことがなかった。沖縄の妖怪のキジムナーのことも知り、クゥが住むなら沖縄やんばる地方がいいと思った。

Q:原作と映画では終わらせ方は違ったのでしょうか?
A:原作では、クゥは河童達がいる河童の国に帰る終わり方です。

もっと聞きたいとも思いましたが、他に質問している人が皆、詳しそうだし、どこかで答えてそうな質問だしと遠慮。「実写作品はつくらないのか?」「次の夢は?」「クゥのディレクターズカット版の動きはあるか?」「好きな&影響受けた漫画」「観ておいた方が良い映画」とか。
もう一生会えないかもしれないし、もう少し聞いておけばよかったです。


ちなみに懇親会は会場近くの居酒屋で。参加人数は20〜30人くらいだったかな。
それぞれ自己紹介しましたが、アニメーション関係の仕事をしている人が多かったです。後はゲーム業界、アニメーション制作をしている学生とか。全く関係ない仕事は自分くらいかも(今、働いてないですが..)。20代前半〜半ばくらいの人が多く、学校関係者以外だと自分最高齢かもな感じでした。自分、この歳で何してるんだ..とまた思いましたが。
皆、アニメ作品に対して詳しかったです。そんな作品まで観ていて、しかも細部も覚えているのか!という感じでした。

懇親会、原監督は午前2時まで付き合っていただきました。遅くまで、ありがとうございました。
15人くらい最後までいたかも。いろいろな話が聞け面白かったです。


●最後に

監督の印象ですが、もっと閉じた感じの人かなと勝手に想像していましたが、思っていたよりフランクな人でした。そして思っていたよりちょっと辛口&反骨的な部分がある人で、1本ちゃんと芯があるような人でした。
日常やリアリティのある作品が好きだったり、つげ義春の漫画が好きだったり、内向的な部分がありそうだったり、世俗的な欲望をそんなに追い求めなさそうだったりと、自分に似た面があり、(勝手に)かなり親近感を感じました。

今回の講義等で、「河童のクゥと夏休み」を観て監督がどうつくっているのか知りたかったことがだいぶわかりました。
キャラのリアリティがあり魅力もある行動・セリフやその演出のアイデアの元とか、監督がどんな作品を目指している&好みなのかとか。
また更にファンになりました。
2010年公開予定の次回作「カラフル」 も楽しみです。



次回講義は、アニメーション作家の相原信洋さん。
外国でも評価されているすごい人らしいけど、知らず。動画もネットに上がっていなくて作品未見。でも作品上映もあるようだし楽しみです。

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