今回は、人形アニメーション「どーもくん」や「こまねこ」等の合田経郎監督。
会場は満員でした(45〜50人位か)。
一般的な監督のイメージとは違った方で、監督になるまでの流れも少し独特でした。
【注意】
- 自分が取れたメモと記憶をもとにまとめています。
- メモがうまく取れず、記憶から補足し、だいたいの要点でまとめている箇所もあります。
- そのため監督や発言した人の本意とは少し外れてしまった点もあるかもしれません。悪しからず。
- 話の内容の全てをフォローしていない&できていません。
※記憶違い・間違い等があれば、コメントでもください。
●学生時代
・勉強好きじゃなかった。中学生から勉強しなくてよい方向にいきたいと考えるようになった。
・それもあり、デザイン科の高校に行く。
・高校の先輩に視力が良いとの理由から自主制作映画のカメラマンを頼まれる。
ゴジラの1コマ撮りの8mm映画だった。
一夏掛けて撮影したが、全てピンボケだった。でも楽しいなと思った。
・卒業後、映画の専門学校へ。
16mmの憧れもあり入学。
・皆で作品づくり等は楽しかったが、年5本くらいしか映画を観ず、自分は映画に選ばれてないなと思った。
●卒業後
・就職時、友人にCM制作会社に誘われて入社。
・プロダクションマネージャーの仕事だった。
・CMの仕事は、平均1か月半くらい掛かる。
・いろいろな人と関わって仕事するのは楽しかったが、本当にこの仕事がやりたかったのかと疑問になり、とりあえずその会社を辞める。
・辞めてからプラプラしていた。散歩とかしていた。
・仕事の声が掛かるので、1本(1か月半)CM撮って、1〜2か月休むという暮らしを5年間くらい続けていた。
・時間があるので、いろいろ考えた。生きる事とか。
●「どーもくん」について
・前の会社を辞め、フリーの仕事をやっていた時代、プロダクションマネージャーからプランナー(企画)の仕事が多くなっていた。
・ティー・ワイ・オーのプランナー募集に応募し入社。
・社内でNHK衛星放送のキャラ企画を募集していた。
・締切の前日3時か4時にまだ白紙状態。そのときに落書きしていて出てきたモノが「どーもくん」。
・今までキャラをつくったことなかった。採用されてびっくり。
・その採用された絵をスクリーンで見せてもらう。
花畑にいるどーもくん。かなりゆるい感じ(キャラも背景も)で会場でくすっと笑いも起こる。
(アート・アニメーションのちいさな学校だより : 『NHKどーもくん』•『こまねこ』合田経郎監督 来校!にスクリーンに映された画像があります。)
・どーもくんが暗い穴蔵にいてTVを観ているイメージは浮かんだ。
・はじめは着ぐるみで制作と思っていた。
・プロデューサーの人は2Dのコマ撮りを希望。
・しばらく相談の上、人形のコマ撮りに決まる。
「どーもくん」制作時の話
・30秒を3日間で撮った。ほぼほぼ徹夜。
・(制作)スタジオですごいドキドキした。
・撮る時は、必要な人10人くらいで撮った。
(普通のCM撮影時のように)プロデューサーや代理店の人はいない。
・子どもの頃にプラモデルをつくるような懐かしい楽しさがあった。
※ここで「どーもくん」をスクリーンでまとめて観る。
・はじめの頃は年6本くらい撮った。最近は年1本。
・アニメーションをやりたかったという訳でなく、たまたまつくることになった。
・「どーもくん」の実制作に入る前、アニメーターや人形作家の人に見せ説明したとき、唖然としていた気がする。
人形アニメとしては、動かしにくいキャラだったし。
・比べると、はじめの頃のどーもくん(の形)は、四角くてわかりにくい印象。
10年後のを見ると、丸っぽくかわいらしく見える。
・修理の度、人形作家さんから戻ってくると少しずつ変わってきた。
自分の仕事に関して
・自分の大事な仕事は絵コンテ描き。
※「どーもくん」の絵コンテをスクリーンで見せてもらう。会場にも絵コンテのコピーを廻してもらう。
・コンテに秒数もキッチリ書いて、編集は微調整くらいで完成させる。
・「どーもくん」のはじめの制作のとき、大変だったのにアニメーターの人は楽しかったと話していた。
アニメーターの人は動かすのが楽しいのかなと思い、楽しんでもらうため、細かいところはお任せするようになった。
・スタッフ一人一人がどうやったら、楽しくつくってくれるかと考え、コンテをつくるようになった。
・楽しくつくっているのとしぶしぶだと差が出る。
・スタッフの楽しんでいる力で120点になったりする。
・自分にとって、監督は何もできない人。全て人にやってもらう。
※「どーもくん」の海外向けCMとその後に依頼が来たアメリカのスーパーの「どーもくん」CM等をスクリーンで上映。
・子どもの頃の経験や記憶を使ってストーリーをつくる。
自分にとってはオリジナル。
そのときのコツは、細かいディテールを一生懸命思い出す事。
その事が映像のリアリティーに生きる。
・ストーリーを考えるより先に記憶のディテールを思い出す事が先。
●独立前後について
※合田監督の他のCM作品や「ぼくはくま」(NHKみんなのうた)をスクリーンで観る。
・CMディレクターとしてやっていたが、「どーもくん」の絵本とかもつくっていた。
・そんな事もあり、会社の上の人に独立を勧められる。
・半独立的に、ドワーフを一人で立ち上げる。
・アニメーションの仕事が多くなる。アニメーションをもっと知りたいと思うようになった。
・「ぼくはくま」のアニメーターは、「どーもくん」も担当した峰岸さん(峰岸裕和さんかな?)。
・アニメーターの個性が出る。子どもっぽい人は子どもっぽく。女の子っぽい人は女の子っぽく。
「こまねこ」に関して
・東京都写真美術館の展覧会から生まれた作品(『過程を見せる展覧会。”絵コンテの宇宙ーイメージの誕生”』展)。
こまねこ 公式サイト:こまねこについてに経緯の説明等があります。
・展覧会の会場には、窓があって、自分たちがコマ撮りをしている様子を見てもらう。
・作品内で、最後にこまねこがつくったムービーは、自分でつくったもの。
下手につくってくれとアニメーターに頼んだら、監督がやった方が良いと言われ、自分で下手風に演出し8mmで撮ったもの。
・はじめの作品は、5分を1か月半掛かった。
・他の4つのストーリーは、8〜9か月掛かった。
・1日5秒くらいの作成。
・なかなかゴールに着かないと8か月。(風景が変わらない)海上を船で進むようだった。
・終わる時は、「もうこれで終わるのか」とさみしさがあった。
・その後は、1か月くらい掛かるCMの仕事は楽な気持ちでできるようになった。
・「こまねこ」の映画は、お客さんに観られるのが怖かった。でもお客さんの反応を見て気持ちがあがった。麻薬的。
・映画をやってみて、映画をやりたい人の気持ちがわかった。
・「どーもくん」も映画化したい。
●受講生とのQ&A
Q:映像にリアリティーを与えるアドバイスをください。自分は映像制作をしているが、絵コンテをなぞるだけになっている。
A:自分の中の記憶を思い出し、なるべくそれを再現するように。
それが、自分にとってのよりどころであり、オリジナリティだと思っている。
自分は、コンテ100%再現よりも現場でそれよりよいものにしたい。
Q:スタッフに楽しんでもらうように気に掛けていられるが、逆にスタッフの取組みで思う事はあるか?
A:「ここはやらなくてよいです」と言う事も自分の仕事。
拡げていっても収集できなくなるので。
そういった事をするのは、自分が過去にプロダクションマネージャーをやっていたからかも。
Q:どーもくんの声が魅力的だが、実際にいないキャラの声の演出について
A:アニメ的(マスコット的)にしたくなかった。
生き物として存在させたい。
よくあるような高い声の女の人の声にしたくなかった。
アナウンサーの方(元NHKアナウンサーの山川静夫さん)に裏声で言ってもらい、スピードを修正して作成。
はじめに99テイク録って使い回している。
Q:どーもくんのキャラの権利は、監督がもっているのか?(アメリカのスーパーのCMもあったので)
A:権利はNHKとティー・ワイ・オーの両方がもっている。
日本ではダメだが、アメリカでは良いのではという事で、スーパーのCMは制作。
Q:コマ撮り制作のモチベーションの維持について
A:ゴールが見えない不安がスタジオを覆うときは、面白いアイテムを持ち込んだり、イベント入れたり、楽しむ方向で。
何とかなる。モチベーションが落ちている感じをあまり受けたことはない。
Q:作品をつくりたいという動機や、つくりたいというモノはあったか?
A:つくりたいと温めていたモノはなかった。
子どもの頃、学校の先生をネタにした自分のマンガが受けていたりしたが、意識的に将来、これをつくりたいというのはなかった。
Q:キャラの性格はどうつくるのか?
A:決まりはない。絵と同時に決まったりする。
デザインにモデルはない。性格はモデルある。
Q:はじめ、どーもくんを着ぐるみでいった方が良いと思った理由について
A:科学番組で蟻の巣の立体図が出てくるが、ああいうのを再現したかった。
生きている感じを出したかった。それで着ぐるみとイメージしていた。
Q:どーもくんが日本の生活様式なのはなぜか?
A:はじめから和風と思っていた。
自分が知らない事はやりたくなかった。
外人が「どーもくん」は俳句のテイストと言っていた。
講義での話は以上です。
●懇親会での話
講義後の合田監督を囲んだ懇親会にも参加しました。
場所は、会場の上のライブラリーでした。はじめて入りましたが、漫画、アニメーション、映画、美術関係の書籍もたくさんあり温かみのある良い感じの場所でした。
合田監督とは離れていた場に居たのですが、サインをもらうときに、少しだけ話しました。
「合田監督の人形アニメーションは、とても自然な動きに見えるのですが、その辺りはこだわっていたり、スタッフに求めているのでしょうか?」という感じの事を聞いてみました。
合田監督の話だと「その辺りのこだわりはあるが、スタッフの方がそうしてくれている」というような事を話されていました。また「そういう事で監督からやり直しをさせるときもあるが、そうすると1日掛けた作業が全て無駄になり、スタジオの空気が一気に本当に重くなる」と切実そうに話されていました。
サインをもらうのは、色紙等も持っていないし、何人もされていたので遠慮しようかとも思ったのですが、どーもくんやこまねこを観て好きだったので、イラスト付きサインをもらってしまいました。
「どーもくん」のイラストとてもかわいかったです。大切に取って置きます。
他の人に描いていた「こまねこ」もとてもかわいかったです。
イラストを見てもらいたくもあるのですが、許可を取ってないので、自重します。
今回講義を受けて
合田監督は、自分がもっていた一般的な監督のイメージと結構違う印象の人でした。そんな監督もいるのだと少し新鮮でした。
例えば、スタッフに気を使い、スタッフが楽しくつくってくれるようにと考え行動し、自分がと我を押し出さない感じ、自分は何もできないと思うなどのスタッフに対する態度や性格的な面とか。
アニメーションの監督さんは、作家性が強い人、職人的な人が多そうなのですが、自分にはつくりたいモノがなかったと正直に話された事とか。
自分の意志よりも仕事の状況から、偶然、そういった監督になり成功している人もいるんだなと。才能があればこそですが。
リアリティのある映像やストーリーをつくるための方法として、自分の記憶をディテールまで思い出す事を話されていましたが、個人的にとても参考になりそうな方法に思えました。
仕事の実績もあるし、そんなに他人を気にしなくても..と思える面もある方でしたが(自分は昔、他人等をかなり気にする傾向があったので、悪い方にストレス溜まらないかと勝手に心配)、作品同様、柔らかい感じで謙虚で飾らない方でした。
今後も温かみがありかわいい感じもある魅力ある作品&キャラクターを楽しみにしています。
次回講義は、講師の方々とのスケジュール調整がうまくいかず、まだ未定との事。
あと4回あるので、第1期の終了(当初2月予定)はまだ先になりそうな感じです。
講師予定の監督は忙しい人多そうだし、第1期目だから調子もわからず仕方ないのかな。
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