今回は、りんたろう監督。
アニメーション研究家の原口正宏さんが聞き手役(原口さんが聞き手役だと、話の交通整理的なことをしてくれてよい感じです。でも出しゃばることはされないので、質問に対して監督が話したい方にいってしまうこともありますが。)
会場はほぼ満員くらいでした(40人位か)。
「よなよなペンギン」「迷宮物語 ラビリンス*ラビリントス」の話が中心でした。自分は「よなよなペンギン」は未見。
【注意】
- 自分が取れたメモと記憶をもとにまとめています。
- メモがうまく取れず、記憶から補足し、だいたいの要点でまとめている箇所もあります。
- そのため監督や発言した人の本意とは少し外れてしまった点もあるかもしれません。悪しからず。
- 話の内容の全てをフォローしていない&できていません。
※記憶違い・間違い等があれば、コメントでもください。
●はじめに
・アニメ制作50年になった。
・最近の日本のアニメは、コミック原作等でストーリー中心主義になっている。
・(日本では)1980年代でアニメ表現が頂点になり、その後は平行線。
・シナリオのト書きの行間(間と間)をイメージで埋める。
・イマジネーションを大切にしたい。
●「迷宮物語 ラビリンス*ラビリントス」(1989)について
※スクリーンで上映後、監督の絵コンテも見せてもらいながら話をしてもらう(自分は昔レンタルで作品を観て、感覚的で面白いと思っていた)。
・監督の子ども時代の心象風景のみでつくった。
当時の路地、缶蹴り、見世物小屋(サーカス)
・監督が描かれた絵コンテをスクリーンで見せてもらう。
(とても細かく描かれていて、背景も細かいところまで描き込まれていた。)
・絵コンテは、細かく描いて伝える。
・「迷宮物語」は、オムニバスの各15分作品だったが、3人(監督)で1年間完成に掛かった。
・(社会には)闇の部分もないとダメ。
・絵画的に見せたかった。
・はじめから、福島敦子さん(キャラクターデザイン、作画監督、原画)が作画予定でコンテをきった訳でない。
・大友克洋さんが初監督だったので、自分の今までの主要スタッフは、そっちに付いてもらうことにした。
●「よなよなペンギン」(2009)について
・はじめの企画段階では2D。
・マッドハウスの丸山さん(元社長)からCGにしようと言われる。丸山さんも自分もCG嫌いだったが。
・フルCGアニメの監督を受けた理由:
当時の日本ではフルCGアニメがほぼなかったので。
「メトロポリス」(2001年)で2Dではやることがなくなったと思っていたので。
・自分は2Dだと完成が最後までイメージできる。監督はそうでなければ。
・日本のアニメは、背景のレベルが高いので、その部分を持ちあげた作品をつくりたかった。
・絵コンテすべて上がってから(1年間掛かった)、CGの制作。
・絵コンテをパソコンのタブレットで描いて、コンテムービーも制作(制作スタッフにイメージを伝えるため)。コンテムービー制作提案は、前田さん(前田庸生さんかな)。
・ほぼ絵コンテ通りに、絵が上がった。
「よなよなペンギン」をスクリーンで一部上映
・「迷宮物語 ラビリンス*ラビリントス」と繋がっている。
・動く絵本をつくりたかった。
・情感、あたたかさを出すようにした(3DCGでも)。
・1カットずつライティングを変えている(Maya使用)。一番多いライティングは、1カット90くらい入っている。
・背景の色は、あたたかみを感じる少し紫が入った青色がベースになっているが、色に関しては、美術監督には具体的な色を言わず、イメージを言葉で伝えるだけで、後は任せていた。
・ここで監督が描かれた絵コンテ(?)をスクリーンで見せてもらう。主に見せてもらったのは、確か絵を1枚ずつにした.psdファイル(Photoshop)。
・モノクロ(美術監督を尊重との事)で、レイヤー分けし、背景も完成形並にかなり描き込まれている。コンテムービーを前提にしたつくりで、キャラクターの移動方向の矢印などもあり。
・コンテムービーを観る。
「Flashムービーやアトムの時代だったら、これで完成では?」と原口さんが言うほど出来が良い。
「よなよなペンギン」をつくって
・CGの可能性もっとあるのではと思った。
・コンピューターに合わせるのではなく、2Dで培った感性・表現・間等をコンピューターにもって来た。
・日本の現状は薄ら寒いので、今後はパリでアニメーションをつくるのもよいかなと。
・映画は苦労ばかりだ。完成してスタッフが幸せを感じられる作品をつくりたい。
●受講生とのQ&A
Q:監督が描かれる絵コンテはとても丁寧なのですが、締切についてはどう思っていられますか?
A:制作の人は大変なので、なるべく遅れないようにしている。
締切について、昔、アニメーターに説教したことがある。
「よなよなペンギン」の制作時、パリ、バンコク、日本のスタジオを行き来していたが、比べると日本人は勤勉だなと思わされた。
Q:「よなよなペンギン」の制作でCGのアニメーターと衝突したと話されていたが、その内容は?
A:アニメーションのベーシックな物事を知っているが、動きの表現になっていなかった。
ただ動かしているだけではダメということをわかってもらうのが大変だった。
そのため原画をやってもらったが、うまくイメージできなかった。
絵コンテの読み込みが出来ていなかった。機械的に割っているだけ。
サンプルのアニメーションを見せたけど、サンプル通りにつくるだけなので、その方法は止めた。言葉とアクションで伝えた。
講義での話は以上です。
今回は、懇親会は参加せず。
講義を受けて
りん監督は、70歳前と思えないくらい若々しくエネルギッシュな印象の人でした。
背景まで細かく描かれた素敵な絵コンテとコンテムービーにも感心しました。
自分の中のイメージを制作スタッフに言葉で伝えるのに苦労している話もある一方、「2Dだと完成が最後までイメージできる。監督はそうでなければ。」という話もあり、何だかその辺りも印象的でした。
次回講義は、2/27に合田経郎監督。
「どーもくん」や「こまねこ」などの人形アニメーションの監督です。
人形アニメーションということで、また違った話が聴けそうなのが、楽しみです。
ところで、今期(2009年度)面白かったので、2010年度通年のアニメーション監督術も受けることにしました。
講師陣は決まっていないそうですが、全部同じ講師という予定でなく、同じ講師の場合でもまた違う話が聞けるとのことでした。
毎回ほぼ満員で人気のありそうな講座なので、ただのアニメ好きの自分が続けて受講するのにちょっと後ろめたさがあったのですが、続けて受講も歓迎とのことだったし。
—-
この記事に対して問題等ありましたら、連絡先ページのメールアドレスまで。
何かあれば、コメントでもください。