アニメーション監督術 第5回 片渕須直監督:レポート

2009年12月28日(by キョウ) コメント0
12月26日(土)に[アート・アニメーションのちいさな学校]のアニメーション監督術の5回目を受講しました。
今回は、片渕須直監督。会場は満員でした(45人位か)。
今回はメモ取り・聞き取りがあまりうまくできませんでした。。
※記事中の「マイマイ新子と千年の魔法」のネタバレはちょっとだけです。

【注意】
  • 自分が取れたメモと記憶をもとにまとめています。
  • メモがうまく取れず、記憶から補足し、だいたいの要点でまとめている箇所もあります。
  • そのため監督や発言した人の本意とは少し外れてしまった点もあるかもしれません。悪しからず。
  • 話の内容の全てをフォローしていない&できていません。

記憶違い・間違い等があれば、コメントでもください。


●前置きの話
・ラピュタ阿佐ヶ谷で「マイマイ新子と千年の魔法」を上映する前に今回の講義は決まっていた。
・(ラピュタ阿佐ヶ谷では)今日は朝7時から並んでいる人がいた。10時過ぎにはチケット売り切れ。
・アート・アニメーションのちいさな学校で2007年講義をしていた。
・2007年の講義では『円谷英二の映像世界』の書籍を持ってきて話をした。
 内容として:物語性のある作品では、イマジネーションを喚起することが重要。
・画面上でイメージを見せないことにより強いイメージを喚起させる。
 参考作品として:「男はつらいよ 寅次郎恋歌」の縁側のシーン、「アルプスの少女ハイジ」最終回のクララからの手紙の文章”ちょっと走れるようになった”という箇所。


●「マイマイ新子と千年の魔法」に関して
・普通、起承転結で話を考えるが、この原作だとどこを切り取るかで考えた。

ロケハン等の写真資料について
・監督が持参されたと思われるノートパソコンの画面をスクリーンに映して見させてもらう。
・モデルである原作者:高樹のぶ子さんの子どものときの古い写真をスクリーンで見る。本当に新子と同じで額につむじがあり、同じような髪型w
・ロケハンの写真を見せてもらう(主に舞台の山口県防府市で撮ったもの)
 対象毎に細かく名付けられたロケハン写真のフォルダが多数。フォルダ数だけでも圧倒される。
 ロケハン写真+昔の防府市の写真と実際使われたカットの画像を比較して見せてもらう。当たり前だが、ほぼ同じカットになっているものが多い。

この映画の方向性について
・観客(の想像力)にゆだねる部分を多くする作品にしようと思った。
・また、予算が多くなかったので、作品のディテールも多く出来ない→それもあり、観客にゆだねる部分を多くする作品に。
・ノスタルジーに頼らない(企画のときは「ALWAYS 三丁目の夕日」のヒットで昭和30年代ブームだったが。完成時にはブームが去っていると思われたし)、普遍的な児童映画的なものをつくろうと思った。
・(児童映画的なものと言うと)小学生のときに観た映画「小さな逃亡者」(日本版「母を訪ねて三千里」のような感じ)には影響されている。今でも反芻している作品。「ガメラ対ギャオス」の併映だったが、小学生当時、同じように大きく影響されている。

視聴してくれる人について(大人と子ども)
・親子で観に来て、親にも影響力がある映画になるとよいかな。
・新宿ピカデリーでの上映が朝の回だけになり、そのとき大人の姿が多かった。大人にアピールできないか?→ラピュタ阿佐ヶ谷でのレイトショーに繋がった。
・大人も観てほしいが、大人限定でなく子どもも観てほしい。
・子どものときは、大人の世界はいびつに見えたりして、大人の世界は相対的になる。
・普遍的な児童映画では、子どもも一人前として描かれる。また大人も子どもの時の感じを思い出す。大人を子どもに戻す。

千年前の世界について
・原作に載っていない千年前の世界は、絵巻物等を参考にした。
・そのイメージが子どもたちの空想か実際の千年前の世界かどうかは、ゆるくつくっている。どちらかと断定していない。

どんな映画になったのか
・児童文学にあった不思議な薫りが、映画のルールに沿うことでその魅力が失われるのでは?
 (今回の作品では)その映画独自のルールでやってもいいかなと。
・ある意味、捕らえ所のない新鮮な映画になった。
・大学時代(日本大学芸術学部映画学科)の達観しているかのようなクラスメートの言葉として「映画はびっくりさせるもの。どうびっくりさせるかが重要」(←確か)というのがあった。この映画もそうなったかなと。


●受講生とのQ&A
Q:「マイマイ新子と千年の魔法」でレイアウトに広角が多いのは意図的か?
A:(実際にロケハンの写真を見せてもらいながら、説明してもらう)
 雲・空の奥行き感、麦畑の心地よさ、広がりがあった時代の風景を表現するのには広角がよかった。その方が魅力があり得策だと思った。
 ロケハンの外の風景写真(美術監督が一眼レフで撮影)も広角が多かった。
 室内はそれほど広角ではない。
 望遠は緊張感ある。怖い印象がある。

Q:普通の物語の文脈と違い、子どもたちの共有体験がなく、一人一人で自分の問題を解決したように思えた。その意図は?
A:(このQ&A、聞き漏らしが多く、監督の話も難しかったため空欄です。すみません。個人的にとても興味があった質問だったのですが。
 もしこの部分に触れているWeb上の記事等のURLを知っていたり、覚えている方がいたら、よければ教えてください。)
【12/30追記】レポート記事見付けました。
「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督、講義レポート・・・映画は観客の中で完成する(2) – たまごまごごはん
監督の話をきちんとフォローできているレポートです。記憶とメモだけでここまで再現できるとは。
自分はどうも片淵監督の話を理解する能力が低かったです。上記の記事を読んでもすぐには理解できませんでした。。

もう一つ質問あったのですが、メモ取れなかったので割愛します。
講義での話は以上です。


●懇親会での話
講義後の懇親会に片淵監督はラピュタ阿佐ヶ谷の最終上映後の挨拶前まで付き合っていただきました。30〜35人くらいは参加していた印象。
自分は直接話は出来なかったのですが、その場で「マイマイ新子と千年の魔法」が、来年1月からラピュタ阿佐ヶ谷で3週間上映決定したということを教えてもらいました。監督・製作スタッフ・熱烈な支持者の皆さんの努力が実りよかったです。
(ネットとかに情報をUPするのは、挨拶の公表後にして欲しいとちゃんと言われました)
詳細情報は、公式ブログの記事まで
東京以外の全国各地でも遅めの公開がはじまるところが結構あるみたいです。
来年、ラピュタ阿佐ヶ谷に2回目を観に行こうと思います。
でもレイトショーも朝10時からの窓口チケット発売だと、近場じゃない人には不便過ぎる気がします。1〜2時間前とかにしてもらえれば、便利なのですが。


今回講義を受けて
「マイマイ新子と千年の魔法」は、自分の感想記事で”わかりずらい・納得しずらい部分がある”と書きました。
やはりその辺りは、監督の「観客にゆだねる部分を多くする作品にしよう」という意図でつくられたからのように思いました。
やっぱりそうだったのかと思うと同時に、1回観るだけでは自分だとちゃんと理解できない作品だなと思いました。

講義でロケハン写真や実際の千年前の歴史年表のExcelファイルなどの資料を見せてもらいましたが、その細かく大量なデータに感心しました。
監督の話は、わかりそうでいてわからない難しかった部分がありました。

講義の話等からの片渕監督の印象ですが、頭が良さそうで、粘り強い感じがする方でした。資料も緻密そうだったので完全主義的な部分もある人なのかなとも思いました。
でも気のいい感じの人でした。

最後に
今回は講義での話以上に、「マイマイ新子と千年の魔法」の集客が悪く上映館が早々と無くなっていったにもかかわらず、少しでも長く多く上映させるために、率先して一生懸命活動している感じがした片渕監督の姿に感心されられました(活動されている様子はネットである程度知っていました)。
その結果、箱は小さいとは言え、ラピュタ阿佐ヶ谷では連日超満員で来年追加上映も決まりましたし。
それに加え懇親会で他人を無駄に気にせずアニメーションのことを語る受講生の姿も見て、自分も小さくとも格闘していかなければと思いました。自分や好きなものを肯定するために。他者に対して。社会に対して。うまく伝えられなくても。そして似た思いの人たちを見付けられればと。なんて..。
監督や受講生の熱気に少しやられたみたいですw


次回講義は、まだ未定のようです。
当初の予定である2月末には終わりそうにないそうですが、全11回分はやってもらえるようです。

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