アニメーション監督術 第2回 細田守監督:レポート

2009年11月18日(by キョウ) コメント2
11月14日(土)に[アート・アニメーションのちいさな学校]のアニメーション監督術の2回目を受講しました。
今回は、細田守監督。アニメーション研究家の原口正宏さんが聴き手で進行。
会場は満員でした(40人位か)。(追記:後から聞いたのですが、人数多かったので別の部屋でモニタ視聴の人もいたとの事でした。その人数はわからず) 渡邊隆史さん(アニメプロデューサー)も来ていました。

「サマーウオーズ」の絵コンテをプロジェクターで映しながらの解説等もありました。※記事中に「サマーウオーズ」のネタバレあります。
以下、自分がとったメモと記憶をもとに箇条書きで。話の内容の全てをフォローしていない&できていません。
前回同様、自分で要点をまとめた事で監督の本意とは少し外れてしまった点もあるかもしれません。悪しからず。

●はじめに聴き手の原口正宏さんが編集してきた過去の細田守演出作品を鑑賞&解説
 内容は、TV「ゲゲゲの鬼太郎」「劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」「時をかける少女」(うろ覚えなので他にもあったかも)。
 はじめの頃のTV「ゲゲゲの鬼太郎」演出から、細田監督らしい感じが出ていてセンスがある。

●同ポ(同ポジション:同じ画面のポジションを繰り返す)をよく用いることに関して(「時をかける少女」の当該シーンを観ながらも解説)
・東映アニメーション在籍時、TV版(20〜21分位)の作画枚数3000枚制限の解決策としてはじめた。
・自分の演出仕事のレイアウト作業の省力化の意味もある。
・同ポは、手抜きに見えるので、キャラの仕草等でそう見えないように演出する。
・同ポの繰り返しで、リズムが付く、おかしい感覚、おもしろい間や空気がつくれる。
・背景枚数も少なくなるので背景のクオリティーが上がる。TVアニメでは、普通300枚位→200枚位に。
・同ポにおいて、前と少し違った箇所があると、同ポの効果で間違い探し的に、その違う箇所に目が行く。

●FIX主義(カメラワーク変えない[カメラ動かさない])に関して
・カメラワークする動画制作は作画机の上を片付けないと作業できないので、面倒。元はアニメーターだったので、それを考慮して。自分の演出チェック作業時でもカメラワークする作画は用紙が長くなり、パラパラめくり確認するときやりにくいので。
・カメラワークではなく内容で勝負したい。
・じわPAN(じわっと動くPAN)は、やらないようにしている。定番過ぎる等の理由で。

●「サマーウォーズ」に関して
・栄が亡くった後、縁側で家族全員の姿がロングカットでPANしていくシーンは、当初、一人一人か複数人毎に違う場所に居るカットをつくろうと思っていた。
 しかし、20カット以上になるので止める事に。通常1シーンは10〜15カットが丁度よいので。
・和室は広角だと美しくない。望遠の方がよい。黒澤明監督「まあだだよ」を参考にした。かなりの望遠レンズで撮っている。

●受講生とのQ&A
Q:限られた時間と人でクオリティーを上げるには?(←メモがうまく取れなかったので、大雑把にまとめてしまっています)
A:おもしろい・意味がある・やりがいをもってもらうようにアピールして、仕事を頼み、やってもらう。

Q:(アニメーションを演出する上で)観ておいた方が良い映画や影響受けた映画は?
A:映画は観ておいた方がよい。そのときピンと来なくても後でピンと来る事もある。
 書籍として『ヒッチコック・トリュフォー』『ワイルダーならどうする?』『未来映画術「2001年宇宙の旅」』がお薦め(正確な書名は後で調べ訂正したが、メモ間違いあるやも)。
 (映画のタイトルは具体的にあげられなかった)

Q:同ポにより、背景枚数が少なくなることにより、その分、撮影でのクオリティー上げたりするのか?
A:自分は、撮影に関しては、撮影の人に悪くてリテイク言えなかった。最近はデジタルでリテイクが容易になったが、フィルム時代だと全てやり直さないといけなかったので。
 自分の感覚だと、撮影のリテイク理由の1/3は、演出のシート記入ミスだと思われるので。
 デジタルで容易になったので、必要があれば今後は少しはリテイクを依頼しようかなと思っている。


今回は、プロジェクターを多用していたため室内が暗い時間が多く、その際はメモが取れず。

今回の講義の話を聴く限りだと、細田監督は、作品も演出の仕方もその人柄も軽やかな印象がしました。
実制作において、無駄には執着しない&こだわらない感じ。
ガチガチに理詰めでつくるというよりも最後は自分の感覚・感性や制作状況から判断して演出している印象でした。
よい意味で一般的なよい感性(マニアックに偏っていない)、バランスよい感性をもっている人なのかなとも思いました。
その軽やかさは、作品のキャラなどの線画に細さ(繊細さもかな)を感じる事や、影無し作画にも現れているのかも(自分の友人も線と軽さの関係について指摘)。
でも「WEBアニメスタイル」のインタビュー記事を読んだら、「劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」に関しては、かなり理詰めでつくっていた模様でした。

次回は、原恵一監督(11/21)。この前に観た「河童のクゥと夏休み」は、かなりよかったし。次回も楽しみです。

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この記事に対して問題等ありましたら、連絡先ページのメールアドレスまで。
記憶違い等何かあれば、コメントでもください(記憶力低いので..)。

もうハロウィン終わったので、遅ればせながらシンプルなデザインのスキンに変えました。季節で背景色換える予定。白文字で読みにくいかな?

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アニメーション監督術 第2回 細田守監督:レポート」への2件のフィードバック

  1. new

    はじめまして。細田守氏の講演レポート、楽しく読ませていただきました。
    レポート中にございました、

    >書籍として『ヒッチコック・トリュフォー』『ワイルダーならどうする?』『未来映画術「2001年宇宙の旅」』がお薦め(正確な書名は後で調べ訂正したが、メモ間違いあるやも)。

    という箇所ですが、私が以前細田守氏のある大学での講演会でも、その3冊の名前をあげられていたので、おそらくそちらで間違いはないかと思います。
    http://new.ciao.jp/blog/archives/000447.html

  2. キョウ

    情報ありがとうございます。管理人のキョウです。
    お薦め書籍は正しそうですね。
    リンク先のレポート読ませていただきました。質が高く、メモの精度も高そうで、しかもわかりやすくまとめられていて、感心しました。内容も興味深かったです。
    自分はメモ取り早くないし、文章書くの時間掛かるし、そこまでできなさそうですが、参考にさせてもらいます。
    実はこのブログの初コメントでした。ありがとうございました。

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