第59回アニメスタイルイベント「インタビューする人/される人」:レポート

2011年2月1日(by キョウ) コメント0
1月27日(木)に第59回アニメスタイルイベント「インタビューする人/される人」に行ってきました。
編集者/ライター等の仕事をされている小黒祐一郎さん著『アニメクリエイター・インタビューズ この人に話を聞きたい 2001‐2002』の刊行記念トークイベントです。
個人的に興味深い話が聞けたので少しレポートします。

実は、アニメスタイルイベントに参加するのも会場のLOFT/PLUS ONEに行くのも、はじめてでした。昔からどちらも行ってみたいと気になっていたのですが、時間が合わなかったり、元気なかったりで行かずじまいでした。
今回は、アニメをつくる人たちに対するインタビュー自体の具体的な話が聞けそうでとても興味があり+今石洋之監督と佐藤順一監督の話も聞けるというので行ってきました。
「この人に話を聞きたい」単行本第1弾の『この人に話を聞きたい アニメプロフェッショナルの仕事 1998-2001』も読んでいて、内容が興味深く面白いと思っていましたし。
会場は満員でした。男性率が8〜9割くらいで高かったです。
以下、自分が興味を感じた点の部分的なレポートです。

【注意】
  • 自分が取れたメモをもとにし+記憶で補足しているので、話の要点をまとめた感じの箇所が多いです。
  • そのため発言した人の本意と少し外れてしまった点もあるかもしれません。悪しからず。
  • ( )内の説明文章は内容をわかってもらえるようにと自分が加えたものです。前後の会話内容の補足にもなっています。

 ※記憶違い・間違い等があれば、コメントでもください。


●第一部 インタビューする人サイド

アニメ評論家の藤津亮太さんを聞き手役に、小黒さんがインタビューの現場での事から記事原稿作成まで、そして自分とインタビューの関係等について話してくれました。
以下、記載がない箇所は全て小黒さんの発言のまとめです。

○インタビューの現場での事について
・気持ちよく話してもらう事が鉄則。
・1聞いて10も20も答える人等長く話す人の場合、(時間内に)聞きたい事の最後まで話を聞けなくなるので、強くうなずいたり、話を捉えて次の話題に移るようにしたりする。
・インタビューの時間は、撮影込みで3時間が標準。
・質問事項をメモって持っていったのははじめの1回目のみ。
 作品リストは持っていく。
・新房さん(新房昭之監督)はお酒入らないと取材受けないので、監督なじみの居酒屋で取材する。

○テープ起こしについて
・テープ起こしは外部の人に頼んでいる。2時間分が1週間で上がってくる。
・起こした人のフィルターが必ず入っている。
・第三者が行なったテープ起こしにより少し客観視できる。ミスも少し減る。
・時間がないのでテープ起こしは、今は自分でやらない。テープ起こしの作業は自分は好きではなかった。

○原稿作成について
・テープ起こしを何度か読んで(記事の原稿の)ストーリーを見付ける。
・「この人に話を聞きたい」(『アニメージュ』連載)の原稿は3日でつくる。
・インタビューの流れを重視して原稿つくる。インタビューの各部分を素材的には使わない。
・原稿の文章を推敲しないとインタビューした相手と自分だけがわかって、読者にはわからなかったりするので、必ず推敲は必要。
・しゃべっているそのままのニュアンスと読みやすい文章の間で常に揺れている。
・語尾はリズムに合わせて直す。例)”〜ね。”、”〜って。”等を
・インタビューされた人が自分はこういう風にしゃべっていたと思うようにしつつ、読んでわかるように仕上げる。
・会話の呼吸部分では”点”(読点?)を入れる。読みやすくなるように。
・昔は句読点の付け方で激しく言い争った事もあったが、今は”まあまあ”という感じでやっている。

○インタビューの仕事と自分との関係等について
・インタビューの仕事は自分の表現みたいなもの。
・藤津さん質問:外部の何か(社会・経済・歴史etc)に作品等を位置付けると評論になるが、そういう方法を取ろうと思った事はないのか?
 小黒さん答え:自分は評論にはあまり興味が無い(自分が評論する事には興味が無いの意味)。
・自分のアニメ様365日の連載では、評論する事自体が目的になると健やかでない気がしたので、感想というスタンスにした。この作品が好きだと。
・自分は究極のアニメファン(笑)。
・インタビューという仕事に惹かれた(←うろ覚え)きっかけについて2つ
 一つ目:中学生のとき、マンガや映画の解説等がある事を知り、そうした言葉による豊かな世界があると衝撃を受けた経験から。
 2つ目:80年代のとき、小さい欄の記事のインタビューを若い演出家の人(←アニメーターだったかも?)にしたとき、質問に答えてもらうのを拒否された事があった。”どうせ話しても載せてもらえないんでしょう”と言われた。
 たぶんその人は今までそういう機会がある度、考えている事を沢山話してきたけど、ほとんど記事として載せてもらえなかったのでは?と思えた。その人の気持ちはわかるが、自分にとってその経験はトラウマだった。
 その経験も長いインタビュー記事に取り組もうと思ったきっかけだった。
・インタビューでは、その人の仕事のやりがいを聞きたい。
 こういう狙いがあったから、こうつくったという話も聞きたい。
・”「この人に話を聞きたい」はいつまで続けたいとかの目標はあるか?”との藤津さんの質問に対し、”今終わってもよい。とりあえず150回が目標。”との事。
・(「この人に話を聞きたい」の連載に関して)俺を倒しに来い(笑)。その時は、”倒されるのを今まで待っていた”と言って倒れる(笑)。(←細部うろ覚え)
・『アニメージュ』に俺が俺がという人がいたら、「この人に話を聞きたい」の連載は100回以上も続かなかったように思う。


●第二部 インタビューされる人サイド

今石洋之監督と佐藤順一監督が登壇し小黒さんが進行役的な立場になり3人での話。

○はじめに
今石監督:
「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」に関する小黒さんの質問に対して:
・下品はやり切った(地上波でできるレベルで)(笑)。
・親戚には(放送していた事を)知らせてない。奥さんには”いい加減にしろ”と言われた(笑)。

佐藤監督:
「たまゆら」のTVアニメ化決定の話題に対して(会場からも拍手):
・(はじめから決まっていた)出来レースではない(笑)。
 スタッフ・キャスト・関係者も一生懸命やっていたので、そのように思われてしまうのは歯がゆい(←うろ覚え)。

○インタビューされる事や他の人のインタビュー記事に関して
今石監督:
・インタビューを読むの大好きだった。
・「この人に話を聞きたい」のインタビュー取材の話が来たとき(1999年)、やっときたと思った。舞い上がっているのを抑えようとしながらインタビューを受けた。
・インタビューを受けるようになると、その事で”自分はもう出来上がった”と思ってしまう面もあるのでは? 励みにもなるけど。
・「グレンラガン」のとき、同じ質問に同じ答えばかり何度もしなくてはならず、鬱になった。俺は壊れたテープレコーダーかと(笑)。

佐藤監督:
・インタビューはじめに、”この作品はどんな内容の話ですか?”など調べたら簡単にわかる事を聞かれると少しテンション落ちる。
・あまりインタビューは読まない。
 でも高畑(高畑勲監督)さんの話したものを読むのは好き。納得できる。自分の中にスッと入ってくる。

○インタビューの原稿チェックに関して
今石監督:
・インタビューの原稿チェックでは、ほとんど直さない。大まかに内容が合っていればいい。
・自分で”(笑)”を足したりする事はある(笑)。
 自分の会話は、活字になると、冷たく高圧的な感じになっているように思うので。

佐藤監督:
・意味が通じないところを直すくらい。
・自分がしゃべった事だから仕方ない。またWiki等に書かれちゃうかなと(笑)。
・昔は原稿チェックなかった。出てからわかった。

小黒さん:
・90年代に入ってから原稿の精度を求められるようになった。
 それより昔はFAXも普及していなくて、メールもなかったから。
・80年代でもプロデューサーが原稿見せてくれと言う事はあった。
・インタビュー8000字全部を直す人がいた。

○取材時の写真撮影に関して
小黒さん:
・撮影は、今は携帯で写真を撮る人も多いので、外で撮っていても人にあまり注目されない。昔は結構注目を浴びた。
・顔出しNGの人は、皆、どこか少し開いていない印象がある。話の内容も。
 インタビューの場ではじけて結構話してくれていても、原稿チェックの段階で直されてしまったりする。
・写真ではじけている人(はじけた感じに撮られる人)は、話の内容もはじけている。

○作品を観る事とインタビューの関係について
小黒さん:
・自分は、作品をつくる人側というより観る人側。
・(アニメ作品を)観る人の一貫として、インタビュー(の仕事)がある。

今石監督:
・(自分が読んだ)インタビューを楽しむために作品を観る(笑)。

○Webと紙のメディアによる記事の読まれ方・伝わり方の違い
(アニメ誌では触れないようにしているゴシップ的な記事も面白いのでは?との話題から)
小黒さん:
・Webでは、(その記事自体に)あまり興味が無い人も見てしまう。
 例えば批判的な箇所のみとか、そこだけ都合のよいように抜き出されて読まれてしまう。
 アクセス数だけは多くなるかもしれないが、そういった事もあり、ゴシップ的な記事はWebには向いてないと思う。WEBアニメスタイルを続けてきた経験からもそう思う。
 紙と読まれ方が違う。紙だと普通ははじめの文章から順番に最後まで記事を読んでもらえる。紙は興味のある人だけが読むので限定される。

○最後に
小黒さん:
・インタビューで聞きたい事を聞けなかったときは、100人中1人くらい。
・でも聞きたい事の質問に辿り着けなかった事は無い。
・ここまで考えて(作品等を)つくっているとイメージして取材し、さらにその上で考えてつくっていると、すごい感動する。
・その人が参加した作品等を見ていき、(その人のやり方等の)答えが出るまで、その人に取材しに行かない。
・自分が考えた答えを、(その取材で)確認しにいく。
・高畑(高畑勳監督)さんは、想像出来ないのでまだ取材出来ない。
・自分のインタビューの最後の高い山は、高畑さんと思っている。
・ずっとやっているといい事もある。

第二部では、半分冗談的なネタ的な笑える話も結構ありましたが、それは省略しておきます(笑)。

イベントでの話は以上です。


イベントに参加して

自分が観ていない作品等わからない話題もありましたが、アニメスタイルイベント初参加で新鮮だった事もあり、面白かったです。小黒さんをはじめ登壇者の個人的な経験からの興味深い話、そして笑わせてもらえる話も多くあり。

インタビュー予定の人が参加した作品を見まくり、その人の仕事に対するやり方・考え方の答えを見付け、その答えを確認しにいくという小黒さんの取材のやり方が、特に面白く思われ印象に残りました。
答え合わせをしにいくとも言えそうな取材は、インタビューの経験も知識も特にない自分には思っても無かった事でした(後から改めて考えたら、あり得そうでもある事と思いましたが)。
そのやり方を聞いて、考古学者が残された痕跡から昔の状態を推測するような、科学者が仮説を実験等で証明するような事も連想させられました。
また、わかる人にはわかると言えそうな次元の話をお互い確認するために会うという行為が、2人で秘密を共有する密会のようなイメージもしました。
そのときのやり取りは、取材する側にとってスリリングでテンション上がる体験になる事も多いのだろうなと思いました。さらに自分が思っていた以上の答えがあったときは、とても感動されるという話だし。
話を聞いて、小黒さんの入念な下調べ(限られた時間内で)、粘り強い作品鑑賞・分析・考察、目利きな通である視点、豊富な知識とその記憶力、そして作品自体やつくり手の人に対する愛や熱意があるから、貴重ないろいろな話が取材出来ているのだろうなと思えました。

今回、はじめてしゃべっている小黒さんを見ました。書かれている文章等から低めの声で落ち着いた感じに話す人かなと勝手にイメージしてましたが、それほど低めの声でもなく、想像よりノリがよさそうでパワフルそうで、くだけた面白い事も結構話す人でした(笑)。話す相手や状況にもよると思いますが。

アニメスタイルイベントは、興味のある回があったら、また参加してみたいです。
『アニメクリエイター・インタビューズ この人に話を聞きたい 2001‐2002』は、イベントに参加する前に書店で購入しました。読んでいくの楽しみです。

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