「中村亮介と仲間たち あいうら蟹ナイト2」第80回アニメスタイルイベント(2014.3.3):レポート

2014年03月18日(by キョウ) コメント0

3月3日(月)に「第80回アニメスタイルイベント 中村亮介と仲間たち あいうら蟹ナイト2」に参加してきました。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。
出演は、中村亮介監督とコンビを組んで仕事をされてきたアニメーター・キャラクターデザイナーの細居美恵子さんの2人。
司会は、アニメスタイル編集長の小黒祐一郎さん。

昨年9月に開催されたイベントの続編となります(前回レポート記事)。
今回は、細居さんの仕事の歴史、中村監督との出会いや関わった作品を振り返ることが中心のイベントになりました。『あいうら』の話は少なめでした。
会場は前回同様、20~30代と思われる男性がほとんどで、女性は3、4人くらいな感じでした。
時間が掛かってしまいましたが、以下、自分が興味を感じメモ取れた箇所の部分的なレポートです。

【注意】
  • 自分が取れた部分的なメモをもとに+記憶で補足してまとめています。
  • そのようなまとめなので、残念ながら、実際の発言内容や発言者の本意と少し違ってしまっている箇所もあるかもしれません。すみません。
  • 記憶力良くなく知識多くないので、知らない点はネット等で調べてまとめています。
  • ( )内は主に自分による補足説明です。

 ※記憶違い・間違い等があれば、コメントや連絡でもください。


●はじめに

小黒さん>
・今日のテーマは細居さんです。
 アニメスタイルイベントではいつも開場前には打ち合わせしないが、細居さんを掘り下げると打ち合わせした。

細居さん>
・何も出てこないです(笑)。自信ないです。


●細居さん 手塚プロダクション時代

細居さん>
・美大でデザインをやっていた。マンガをよく読んでいた。
・手塚治虫のマンガが好きだった。
・大学に手塚プロの求人があり、手塚治虫のマンガが好きだったので受けて入社。
・アニメの経験は無かった。
・入社後、出﨑統さんの仕事ばかりやっていた。
・はじめは、ハーモニー(キャラ等の止め絵で塗りを背景美術で描いたもの)のトレースをやっていた。杉野昭夫さんの作画監督修正があった。
・3か月後から動画をやるように。

(※この辺りで、細居さんが「こんな話でいいんですか?」というニュアンスの発言をされたのを受け、小黒さんが「トークイベントの極意は、しゃべっている人が楽しくするとよいですよ」とアドバイスされ、納得された感じに)

細居さん>
・杉野さんには「マスをとって立体をとらないとダメだ」とすごく言われた。
 大学時代から立体感とれなくて苦労した。
・出﨑監督の『白鯨伝説』(1997,1999)で外のスタッフとも触れあい刺激を受ける。
 手塚プロは埼玉県(埼玉県新座市)にスタジオがあり、他と離れていて接触なかった。
 高谷(高谷浩利)さんの絵の、グラフィック的・デザイン的なものに惹かれた。手塚プロではリアルにとやっていたので。


●フリーになり中村監督演出と出会う(『逆境無頼カイジ』13話)

細居さん>
・その後、フリーになったが手塚プロの仕事ばかりやっていたので(それ以外の経験が無く)、はじめ通用しなかった。
・はじめの1、2年はお金にならなかった。
・楽しんでやっていた。
 自分の線でやると修正されて勉強になった。
・フリーは自分には性(しょう)に合っていた。

※ここで中村監督とのはじめての仕事となる『逆境無頼カイジ』13話「怪物」(2007年)を観ながらのトーク。
(演出・絵コンテ:中村監督、作画監督:細居さん)

細居さん>
・太い線は線を二重に描く事になるので実は線が多い。
・鼻は定規で描く。
・時間あまり無かった。
・中村さんのコンテ見たとき、ベテランの人のだと思った。
 原作より面白かった。衝撃的だった。
・中村さんの原画修正が1.1~1.9まで9枚あることもあった。

中村監督>
・自分の修正→細居さん修正→総作監修正でさらに原画枚数多くなるところもあった。
・動画は6000枚で仕上げ枚数7000枚に。
・マンガと同じコマは1カットしかないが、マンガと同じ流れになるようにした。
・マッドハウスでは枚数多く、300カット超え。

細居さん>
・自宅作業でいつの間にか床で寝ていた。仕事に入り込んでいた。
・動きのツメまでも中村さんは指示入る。
 そこまでやる人とやるのははじめてで衝撃的だった。

中村監督>
・『学園戦記ムリョウ』(2001年)で増井(増井壮一)さんがそこまでやっていて当然と思っていた。
 ツメで変わってくる。
 絵が描けない自分がどう作品をよくするかの方法がツメ。

細居さん>
・コンテでも絵はよかった。気持ちが伝わってくる。
・これは是非中村さんの作品をやりたいと思った。
・会った時に中村さんに売り込んだ。

中村監督>
・演出の絵は気持ちが伝わるのが大事。


●『魍魎の匣』(2008年)について

中村監督>
・作監が細居さんに決まっていた後で自分に監督が決まった。
・CLAMP絵(キャラ原案)だったのに立体感のある絵にしようとした。かなり大変だった。
 9頭身くらいにした(原案だともっと頭身高い)。
・リアルのこともやってきたのが、後で生きてきている。


●『青い文学シリーズ「走れメロス」』(2009年)について
※当該作品の一部を会場で観ながら

中村監督>
・プロデューサーから『魍魎の匣』のような感じで、『走れメロス』の原作が入っていれば後は自由につくっていいと言われた。
・キャラクターデザインも決めていいという話だったので細居さんに頼んだ。

細居さん>
・キャラクターデザインは一からで、作監と頭使う部分が全然違う。全然違う仕事だなと思った。

中村監督>
・舞台の演技があるので舞台を結構観に行った。
・現実とイメージの繋がる途中やその表現に興味がある。

細居さん>
・西田亜沙子さんのキャラクターデザイン(『魍魎の匣』でキャラクターデザイン担当)はうまく嘘を付く影を付ける。

中村監督>
・西田さんはアニメーターの職人としての技術ががっちり付く前までに、デザイナーになったので立体での表現と違う。

細居さん>
・今考えると線が緊張している、頑張ろう頑張ろうとし過ぎてる。
・線も減らさず動かそうとしていた。

中村監督>
・マッドハウスは線が多くて動かそうというのがある。
・立体を丁寧に追っかけてるようなところは、川尻(川尻善昭)さんの系統か。

細居さん>
・スケジュールが延びてやり切れた。
 その点で反省点も見えた。


●PV『Perfect Day』(2011年)について

中村監督>
・マッドハウスの丸山(丸山正雄)さんと意見合わず、勢いで辞めた(笑)。
 次の仕事決まってなかったが、フリーに。
・ユーフォーテーブルの人(名前メモ出来ず)に『Perfect Day』(supercellのPV)の仕事紹介される。
・この頃からマッドハウス的なものでない今風なものをやろうと思うように。

※ここから『Perfect Day』を観ながらのトーク。

細居さん>
・supercellのイラストレーターさんの絵にも影響受けた。三輪士郎さんとか。

中村監督>
・段々鎌倉感が増している(笑)(『青い文学シリーズ「走れメロス」』でも鎌倉使用)。
・レイアウトは細居さんと半々、原画は細居さん。
・ハイコントラスト作画の最後の作品。
 段々、作画平坦になってきている。
・(小黒さんの「『ねらわれた学園』でもまだ濃いんじゃない?」との発言に対し→)『ねらわれた学園』から影の付け方をガッツリ変えた。色彩設定の小針裕子さんと一緒に。

細居さん>
・中村さんの絵は光が斜めで影の量が多い。

中村監督>
・出﨑さん風と言われるが、見たことあまりない。
・フレアやハレーションの光を入れるのは美的な理由で。
・新海誠監督作品はよく観ている。


●小黒さんとのQ&A

Q:小黒さん>
・中村さんは仕事のパートナーとしてどうか?

細居さん>
・中村さんはチームをまとめていくのがうまい。

中村監督>
・つくっている途中は演出○ねと思われていても、出来よければ。

細居さん>
・最終的にいいものが出来れば、その苦労報われる。


Q:小黒さん>
・中村監督とつくるのは大変そう。細居さんは打たれ強い?

(細居さん自身は肯定も否定もせず、自分では判断できない感じ)

中村監督>
・そうだと思う。体力もある。
・作品を1クールやって(スタッフに)一体感出来たところで終わるのもったいない。
 だったら同じメンバーで。

細居さん>
・最近はよく意見言い合う。ほぼ作画に関して。
・中村さんは軸がぶれない。
 やっている途中はわからないときでも、やってみたら”なるほど”となる。

中村監督>
・自分が演出やっていたときに悩む監督がいて、それは困るなと思っていたので。
・荒木(荒木哲郎)監督は研究熱心。よく演出や作画の件で聞かれた。
 同期(マッドハウス)で切磋琢磨してきた。


Q:小黒さん>
・細居さんは特に影響受けた人いるの?

細居さん>
・一人でこつこつやってきた。自己流?
 関わった人たちに影響受けた。

・手塚プロにいたときから、枚数描いていた。
 動かしたいが先に走っていた。
・その当時は、STUDIO4℃の作品に手塚プロとは対極ということで憧れていた。
 森本晃司さんの『ノイズマン』や『永久家族』とか。

・エロスは『ねらわれた学園』(2012年)から。
 勉強して身に付いた。
・実はずっと柔らかい絵が描きたかった。
 ほっぺに触ったら、ぷにっとかの感触。
 メロスでもやろうとしたが(笑)。
・色彩設定の小針裕子さんと一緒に仕事をして、(そういう面で)色も重要だなと思った。

中村監督>
・『あいうら』では細居さんがむっちりしたのと言っていたが、自分には?だった。(絵が)あがってきたらわかった。


Q:小黒さん>
・萌えは得意ですか?

中村監督>
・勉強が好きなのでテーマとして与えられたらやる。演出家としてやる。
・お題に合わせて研究したり勉強するのが好き。


●銀の匙 Silver Spoon(第2期) EDについて

中村監督>
・時間が全然ない中でどう動かせるかと取り組んだ。

・年数にすると『カイジ』から6年余りだが、細居さんの絵も含め変わってきたなと。


●参加者とのQ&A

Q:鎌倉に惹かれた理由について
A:
中村監督>
・『走れメロス』が文豪の作品だったので文豪っぽい場所でと思い、行ったらよかった。
 何回も行って(都合10回)、こんないい場所無いなと。
・今後は新しい場所を開拓したい。

Q:手塚マンガではどの作品が好き?
A:
細居さん>
・70年代に描いていた大人向けの作品が結構好き
 『きりひと讃歌』『ムー』『人間昆虫記』とか。
・どの年代も面白い。

Q:『あいうら』で達成し、以降の作品でやっていきたいこと(←うろ覚えです)
A:
細居さん>
・女の子の可愛さはやって楽しい。
 イラストで女の子を描く事楽しい。
 イラストとかも描きながら、自分の(作品)世界を深めたい。

中村監督>
・作品にシンプルに向きあったら、そうなった。結果的に一歩進んだと言える。女の子の可愛さ(の表現)に関しても。

Q:作品の準備について(←うろ覚えです)
A:
中村監督>
・準備に人よりも相当時間掛かる。
・参考になる範囲の部分を勉強しているのが好き。
 (制作に)入ったらそれに集中してしまうが。

Q:キャラクターデザインの苦労と楽しさについて
A:
細居さん>
・『ねらわれた学園』は一番苦労した。
 オーディションで決定。自分がやると思ってなかった。
 すごい悩んだ。
 色々な絵を描き、絵を見て研究した。
 出来てもその絵に馴染むまで時間が掛かった。
・自在に出来るわけでない。
・相当考えるので、他の人のキャラクターデザインの考え・意図がだいたいわかるようになった。

中村監督>
・ベテラン等で第一線でキャラクターデザインしている人はアニメーターの技術の高さで分析・研究してやっている。
 若い人は今の好きだけ、感性だけでデザインしたりする。

Q:『あいうら』の短い尺ならではの方法?(←うろ覚えです)
A:
中村監督>
・原作を読み、テンポを上げて密度濃く、長くゆったりで癒し的にとどちらも出来るなと思ったが、エンドレスで見られるような環境映像的にゆっくりにした。
・同業者には自分の作品中では『あいうら』が一番人気。アニメ制作で疲れて帰ってきて、疲れるものを観たくなく、癒されるものを。
・フォーマットを先に決めてからつくった。OP→本編→BGM掛かってED→エピローグ。
 エピローグを入れたのは、省略感を出したくなかったため。


●現在制作中のオリジナルムービーに関して初発表

中村監督>
・仕事としてアニメをつくってきた。
 一から個人制作される方はすごい。そういった作家の人とも引けを取らないように。自分の原点を確かめたいという想いから。
 はじめてオリジナルムービーやる。
 丁度、時間が空きそうだったので。
 どこからも発注受けてない個人フィルムになる。
・作監:細居さん、音楽:村井秀清さん。
・4分弱くらい。
・今年のコミケで販売。通販も予定。
・WEBアニメスタイル上で制作状況を報告予定。

細居さん>
・柔らかく可愛い女の子描いている。
・可愛い色気好きなので描いていきたい(←「お色気は細居さん次第」という中村監督の発言後の流れで)。

中村監督>
・場所は鎌倉ではない。
・自分も可愛いの好きだった。

最後に細居さんと中村監督から、集まってくれた会場の参加者と作品を好きになってくれる人たち等に感謝の言葉が何度もあり、イベント終了となりました。


プレゼントの缶バッジ
※参加者全員に若月先生の缶バッジプレゼントがありました。
 中村監督、細居さんありがとうございます!


缶バッジ 若月先生


イベントに参加して

今回は『あいうら』の話が少なくて残念でしたが、よく知らなかった細井さんの現在までの仕事の歴史、中村監督との出会いとコンビを組んだ理由などがわかってよかったです。

前回のイベントでは、細居さんは他の2人のアニメーターさんと比べ『あいうら』での仕事の大変さを話されてなかったので、本当に器用に仕事をこなせる天才のような人なのかな?と思っていました。
でも才能だけでなく努力も沢山されていたようで、やはり才能があって努力も継続して行なえる人でないと注目されるような優れた仕事は出来ないのだと思わされました。

今回、個人的に気付かされたのは、『あいうら』のキャラの身体に存在感や艶かしさを感じ、また中身が詰まっているように感じられる大きな理由の一つに丁寧に立体で捉えられたデザインと作画があるのではないかということでした。
もう一つの大きな理由は、フェチ系の写真集等で参考にされたキャラのポーズのよさにあると思われますが。
自分は詳しくないこともあり、アニメを立体という視点では特別に意識して見てなかったです。自分にはちゃんとは出来ないと思いますが、今後はそういう視点からも見られたらいいなと思いました。

会場で久しぶりに『青い文学シリーズ「走れメロス」』を観ましたが、記憶よりだいぶ濃いイメージがした作画でした(笑)。自分の好みが薄味になったのか?、最近の作品に濃いものが減ったのか? 両方の気がしますが。

質問を事前にいくつか考えたのですが、どうも的確なものにまとまらなかったので止めました。個人的に会場内での質問はどうも気楽には出来ないし。

細居さんが柔らかく可愛い女の子を描いているという(←個人的に重要(笑))中村監督の自主制作オリジナルムービー楽しみです。
今回、『あいうら』2期の話は全く出ませんでしたが、いつか実現出来たらうれしいです。
自分は一昨年から昨年に掛けてTVアニメに対する興味がだいぶ薄れてしまい、最近はTVアニメをあまり観ていない状態ですが、2期決まったら毎回必ず観ます。


※他のまとめ
あいうら蟹ナイト2備忘録 – まっつねのアニメとか作画とか

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