今回は、舛成孝二監督。アニメーション研究家の原口正宏さんが聞き手役でした。
「宇宙ショーへようこそ」を中心に監督の演出について話してもらえました。
会場はほぼ満員でした(45人位か)。
今回は、絵コンテや映像をスクリーンで映している時間が長く、手元が暗くメモがあまり取れませんでした。以下、レポートです。
【注意】
- 自分が取れたメモをもとにし+記憶で少し補足しているので、要点をまとめた感じの箇所が多いです。
- そのため監督や発言した人の本意と少し外れてしまった点もあるかもしれません。悪しからず。
- 話の内容の全てをフォローしていない&できていません。
※記憶違い・間違い等があれば、コメントでもください。
●はじめに
原口さん:監督の作品には独特の時間と空間が流れています。今回、絵コンテや演出について話を聞く事でその創作に迫れるのではないかと思っています(←うろ覚えです)。
●今までの演出に関して
・イマジナリーラインを知ったのは27歳くらい。
深夜TV番組を見て知った。
・演出の本を読んだ事ない。教わった事ない。自己流。
でも出来上がった作品に間違いなかった。
・OVA制作時は、実験的なことがやれてよかった。
・自分が出した案よりよいと思われるものがあれば、必ずそれを取り入れている。そういう場合、自分のプライドを守るために自分の案を通してはいけない。
過去に1度そういう事を行い、後でとても後悔した経験から。
絵コンテに関して
・作画の芝居は、20年前のTVアニメでは無理なレベルをOVA時代から要求していた。
・(自分の中では)絵コンテは100%の状態。後は作画ががんばればいいという考え。
・「MAICO 2010」(1998)では、全カットをレイアウトは3DCGで作成・チェックし、そこにキャラを入れる方法。
・「かみちゅ!」(2005)のロケハン写真4000枚。教室は3Dでレイアウト。
・自分のコンテのつくり方は、背景レイアウトをつくり、その後、キャラを入れる方法。
・その方法の理由は、(作画の)レイアウト負担を減らし、キャラの芝居に集中できるようにしてもらうため。
●「宇宙ショーへようこそ」(2010)に関して
(「宇宙ショーへようこそ」の絵コンテ・本編映像一部をスクリーンで見ながら)
・キャラを追っていくシーンをつくっていく。ドキュメンタリーぽくカメラが追っかけた。
・映っているものから選択して観てほしい。少し観る訓練が出来ている大人はよく観れない。かなり観れる人や逆に訓練されていない子どもはよく観れたよう。
・半年前にタイトルに「へようこそ」が付いた。
・物語の地球での場所は、西伊豆。
絵コンテに関して
・「宇宙ショーへようこそ」のコンテ2年掛かった。地球篇で10か月。
・コンテはFlashで描く。
・絵の部分はよい写真があればそれを貼り込んで使用。
・作画(制作)に良質な情報があればいい。
・作打ち(作画打ち合わせ)時には、キャラの運動神経のよいor悪いを伝える。(作画の)アクションに関する事を伝える。
後はコンテを読んで考えて(という方針)。
・考えないでやられる(作画される)のは嫌だ。こっちは死ぬほど考えているのに。
・作画の人に否定されるのは仕方ない。自分は描けないので。
そういう場合、自分がもっとよいレイアウトを考える。
・「スタジオゑびす」で仕事をしているとき、アニメーターの机に担当してもらうパートのコンテを置いといていたら、後でクシャクシャにしてゴミ箱に捨てられたりしたこともあった。
きれいにして、また机の上に置いたり、そのアニメーターと話をしてやってもらったりした。
・「スタジオゑびす」は出来る人ばかり。
・シーン変わりの1カット目はとても悩む。1週間くらい掛かる。
●「R.O.D -THE TV-」(2003)の本編1シーンを観ながら演出の解説
(最終話(確か)のねねねとアニタの屋上での会話シーン)
・しゃべっている人物に(観ている人の)主観がいく。人物が画面から消える事で主観変わる。
・今、しゃべっている人間を映すよりも、聞いている人の表情を映した方がよい。しゃべっている人は声だけで感情を想像出来るので。
・人物のクローズアップやその人物の書いた文章を映す事でも主観が変わる。
●受講者とのQ&A
Q:Flashでの絵コンテのつくり方はどうしているのか?
A:フレーム(外枠罫線等)のレイヤー、字コンテのレイヤー、絵コンテのレイヤーと分けている。タイムラインの1コマが1ページ。
Q:「宇宙ショーへようこそ」で描きたかった事は?
A:キャラクターをつくりあげることをやっていった。
エンターテインメントを目指した。
Q:「宇宙ショーへようこそ」ではどのように資金を集めたのか?
A:※会場で同席していた落越友則プロデューサーから回答。
会社を説得する腕力があればよい(笑)。
企画の意味・実績・次へのステップを説明した。
講義での話は以上です。
講義後の監督を囲んだ懇親会にも参加しました。
監督は受講者の質問に沢山答えられていました。ところどころ聞いていたのですが、実際の現場の専門的な話も多く、記憶が曖昧なので割愛します。すみません。
今回講義を受けて
舛成監督作品は「かみちゅ!」「ココロ図書館」「R.O.D -THE TV-」が好きでした(一番は「かみちゅ!」)。
それらの作品では、キャラのゆるい日常シーンがとても魅力的に描かれています。
監督自身もゆるい面もある人なのかなと憶測していましたが、ご本人は仕事に対してはとても厳しい人に思えました。
レベルが高い職場で揉まれ、コンテをゴミ箱に捨てられながらも、しぶとくやってきた経験もあるからでしょうか。
コンテや映像に対する説明が丁寧で1カット1カットに理屈があり(もちろん作品全体でも)、かなり考えてつくられる人に思いました。
アニメーターがキャラの芝居に集中してもらえるためにも先にコンテで背景レイアウトをつくっておく話、1998年の監督作品(「MAICO 2010」)の時点で全カット3DCGでレイアウトしていた話も印象深かったです。
実は「宇宙ショーへようこそ」は、劇場で観ていませんでした。公開前の深夜TVの冒頭22分放送を観たのですが、どうもピンと来ず、公開後のネット上の感想でも個人的に惹かれる感じがなかったからです。講義が決まった時点では、近所の映画館はほとんど上映していませんでした。
DVDが出たら是非観てみたいと思います。
次回講義は、ずっと日程が決まらずにいた佐藤順一監督。
(2009年度監督術の予定講師に入っていたので、2009年度のみの受講者は、舛成監督か佐藤監督かを選択できました)
10/30(土)の予定ですが、まだ確定ではないとの事です。
2009年度「アニメーション監督術」全11回受講終了して
今回11回目で2009年度のアニメーション監督術は終了しました。
去年の10月からはじまり、2月末終了の予定がほぼ1年弱。。ここまで延びるとは思っていませんでした(TVシリーズを制作している監督は特に忙しくて日程が合わないそうです)。
「小さな学校」でのはじめての試みだったので、様子がわからず仕方なかったのかもしれませんが。
期間は延びたりしましたが、自分は、今までアニメやアニメーション監督の話を直接聞く機会がなかったので、とても興味深く面白い講義でした。
回数を重ねると流石に新鮮さは少なくなってきましたが、監督それぞれ色々な性格・経歴・考え・こだわり・制作方法があり、面白かったです。
講義後の監督を囲んだ懇親会もアットホームな感じで、普段は話す事がない監督、アニメ+アニメーション好きな人、制作or関係している人等とも少しは話が出来たりしてよかったです。
1回目を受講したとき、これは部分的になるとしてもレポートとしてWeb上にまとめて残しておいた方がよいなと思い、書きはじめました。話の内容が興味深く感じられ、監督や作品のファンにとっては貴重な話もあるかなと思ったためです。学生時代以降、講義のレポートはほぼ書いた事がなかったのですが。以前からやっていたアニメ感想のページをブログ化した事もあって、とりあえずやってみたくもなっていました。
もっとうまく毎回レポートをまとめる人が何人かいたら、自分は好きな監督や印象深かった回だけレポートを書けばいいかと思っていました。しかし、毎回書く人は現れず(主催側の「アート・アニメーションのちいさな学校だより」以外。たぶん)。自分は書き続けています。
はじめの頃は、慣れなくわからない事もあり時間ばかり掛かっていました。後から気になったりして、完成まで1〜2週間掛けていました。
最近では、講義の内容自体は1〜2日でだいたい完成させられます。でも相変わらず、最後の自分の感想部分がどうもまとまらない&気になり、その後、時間掛かる事も多いです。見る人にとっては、無くてもよいと思われますが、とりあえず書いておきたいので。速い人は1〜3時間で完成させそうな気がしますが。
はじめの頃に比べると、レポートのまとめ方は少しは上達しましたが、記憶力がかなり弱いので、メモ取り・話の記憶はなかなかうまくなりません。
はじめは、自分の講義の感想も結構入れようかと思っていました。でも知識も少ないし時間は掛かるし程度の低いまとめになりそうだったので、やはり長年制作されてきた貴重な経験・考え・こだわりがある講師の監督や作家さんの話をメインに据えました。
2010年度も受講していますので、今のところは、2010年度残りの講義のレポートも書く予定です。
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